基礎・入門書3

森林資源科学入門


森林資源科学入門
日本大学森林資源科学科 編
A5判 312>ペー>ジ 並製
ISBN978-4-88965-136-2 C0061
品切(絶版)
奥付の初版発行年月:2002年04月
書店発売日:2002年04月01日

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内容紹介

拡大・進化を続ける研究領域について、より広く・深く知るための新しいビギナーズブック! 森と木を科学する最新知見を17名の研究者がわかりやすく解説しました。好評2刷。

目次

第1章 森林を科学するために
 1 統計と写真で見る森林と木材(木平 勇吉)
  1 世界の森林と木材生産の現状
  2 日本の森林と木材需給の現状
  3 自然環境に応じて変わる森林の姿
  4 人間が作った人工林の姿
  5 破壊された森林の姿
  6 環境としての森林の機能
  7 木材を生かした住宅と暮らし
 2 森林科学の体系(木平 勇吉)
  はじめに
  1 林業を発展させるためにはじまった林学
  2 森林を保護しながら利用する—森林科学の目的—
  3 森林科学は5つの領域で構成される
  おわりに

第2章 森林生態系を知り活かす
 1 森林生態系の生い立ちと役割(佐々木 恵彦)
  1 森林が蓄積する有機物
  2 木はなぜ大きくなれるのか
  3 木の幹が丈夫な理由
  4 どこに森林ができるか
  5 森林にはぐくまれる生物
  6 森林の作る環境と生物
  7 森林の有機物の働き
  8 希少生物の存在
  9 動物の共進化
  10 森林の遺伝子の利用
 2 エネルギー・熱・物質の循環と森林(瀧澤 英紀)
  はじめに
  1 太陽エネルギーで決まる地球表面の温度
  2 森林における水循環
  3 森林の物質循環
  おわりに
 3 森林を造り育てる−ブナ林の造成−(本江 一郎・鍛代 邦夫)
  1 祖先が造り育てた日本の森林
  2 日本の原生林
  3 日本のブナ林
  4 ブナの種子収集
  5 ブナの苗木を作る
  6 種子や苗木の貯蔵
  7 植栽と保育
  8 これからのブナ林造成

第3章 森林の環境を守る働きを活かす
 1 森林の環境保全機能とその活用(塚本 良則)
  1 森林の環境保全機能に関するいくつかの例
  2 森林の環境保全機能の分類
  3 森林の環境保全機能活用の歴史
  4 森林・社会の変化と森林の環境保全機能活用
  5 森林の環境保全機能活用の将来
 2 森林昆虫学の可能性−多様性保全に向けて−(岩田 隆太郎)
  1 地球上の種多様性を支える森林昆虫
  2 森林昆虫学と森林保護学
  3 森林昆虫学を巡る諸概念
 3 森林保護学と野生動物の管理(山根 明臣)
  はじめに
  1 生物害
  2 虫 害
  3 樹木の病害
  4 哺乳動物による森林被害と野生動物保護管理
  おわりに
 4 土砂災害とその対策(石垣 逸朗)
  はじめに
  1 土砂災害の定義
  2 土砂の生産様式
  3 土砂移動現象の種類
  4 わが国の土砂災害の実態
  5 土砂災害への減災対応
  6 GIS(地理情報システム)による災害予測と被害予測

第4章 木材の特性とその多様な利用
 1 木材の特性(濱本 和敏・宮野 則彦)
  はじめに
  1 木材の種類
  2 木材の組織構造上の特性
  3 木材の物理的特性
  4 生物材料としての木材の特性
 2 木材の化学成分とその利用(石津 敦)
  1 木材の主要成分
  2 抽出成分
  3 化学成分の利用
 3 環境と共生する木造住宅(堀江 亨)
  1 環境と資源を考える4つのキーワード
  2 LCA(Life Cycle Assessment)とは
  3 炭素の貯蔵量からみた木材利用のシミュレーション
  4 エコロジー住宅(環境共生住宅)とは?
  5 現代の木造住宅と古民家をエコロジーの観点から比較する
  6 古民家はどこがエコロジーか?
  7 古民家再生の意味
  8 古民家再生の実例

第5章 森林の経営と管理
 1 持続可能な森林経営への取り組み(増谷 利博)
  はじめに
  1 持続可能な森林経営とは
  2 政府レベルの取り組み
  3 民間レベルの取り組み
  おわりに
 2 環境としての森林を利用する(本江 一郎・鍛代 邦夫)
  1 自然が造る森林環境
  2 酸性雨と樹木の枯れ
  3 水環境・大気環境を整える森林
  4 割り箸は環境破壊か
  5 ダイオキシンをも分解するきのこ
  6 森林レクリエーション
  7 存在するだけで役に立つ森林
 3 森林作業の現状とこれから(井上 公基)
  はじめに
  1 木材生産作業
  2 集材作業
  3 林道と作業道
  4 安全作業
  5 安全快適型の森林作業に向けて
 4 森林の伐採と更新−森林モザイク論−(木平 勇吉)
  はじめに
  1 森林モザイクとは何か
  2 森林モザイク論−持続可能な森林管理への試論−
  3 どのようなモザイクがよいか−モザイクの評価−
  おわりに

第6章 森林政策と社会・経済・国際環境
 1 森林政策の変遷−社会・経済・国際環境−(塩澤 南海治)
  1 世界の森林資源分布
  2 森と木の国・日本
  3 森林はどのように扱われてきたか
  4 世界の木材需給の特徴
  5 熱帯林激減の原因はなにか
  6 環境をめぐる南北問題
  おわりに
 2 森林・林業・木材をめぐる状況(田中 純一)
  1 私たちの暮らしと森林・木材
  2 木材の需要(使用)量と供給(生産)量
  3 森林整備と林業生産の担い手
  4 木材の加工や流通を担う木材産業
  5 森林・林業政策のこれまでとこれから
  6 森林・林業をめぐる国際的動向

解説用語一覧(索引)

前書きなど

 森林を対象にした勉強を始めようとする人々,特に大学で初めて森林を専攻しようとする学生諸君が,この本の主たる読者である。森林についてさまざまな夢と期待を抱いている人々に応えて,最初の勉強の教材を提供することを目的にして本書は編集されている。
 今日,大気中の二酸化炭素の増加という地球規模の問題から,動植物,水,土,風景など身近な問題まで,森林の環境保全の働きについての関心は高まっている。一方,多くの人々は都市に住み,自然そのものに触れる機会が少なくなっている。樹林に踏み込む実体験が少ない日常の暮らしの中で,知識としてあるいは情緒的な対象として森林は存在している。そこで,専門的な勉強への第一歩は基礎的な事実を正確に理解することである。そのことは,やがて,それぞれが抱いている夢を実際の森林で実現することに結びつくであろう。森林を学ぶことへの興味を深めることを目的に日本大学の教員が,それぞれの専門分野の題材を用いて,森林資源科学への入門書としてまとめたのが本書である。
 この本のタイトルである森林資源科学とは何か。伝統的に森林研究は林学(Forestry)と呼ばれ,木材資源を中心とする林業技術が主な内容であった。しかし,1980年代以降,研究対象の範囲が広がり,興味の視点が移り変わり,研究体系が複雑になるにつれて,その名前は森林科学(Forest science)や森林資源学(Forest and resources)などと呼ばれている。自然環境,経済環境,社会環境を総合的に解析しなければ問題が解けなくなったといえる。
 しかし,名前についての議論は日本でも世界でもあまり深まらない。名前により研究の原点に多少のニュアンスの差はあるものの,森林にかかわる様々な問題を環境をも含めて総合的に解かなければならないことには変わりはない。したがって,この本のタイトル「森林資源科学」に特別の意味があるわけではなく,執筆者が所属する日本大学の「森林資源科学科」を引用したものである。
 個人的な注釈を加えるなら,森林の役割を「資源」と「環境」とに分けて,それらは相反する機能とする前提を置く必要はない。収穫できる林産物を資源と定義し,水,土,大気,動植物の存在を環境と定義することは現在の森林問題を解くのに決して有効な方法ではない。いわゆる環境も広い意味での森林資源であると思う。
 この本の構成については,先に述べたとおり,森林に関する勉強の入門書として組み立てられている。まず,情緒的なイメージから脱して,現実の科学の対象としての森林を知るために,第1章では統計と図・表・写真により日本と世界の現状を示す。とりわけ,写真は様々な森林の姿を見せてくれる。そして,森林資源科学(森林科学)の体系を解説する。続いて,まとまりのあるテーマごとに5つの章に分ける。森林の生態,森林の環境,木材資源の利用,森林の経営と管理,森林の政策と社会と国際環境である。それぞれの章は2〜4の節からなる。どの章から,どの節から読んでもよい。それぞれに完結して理解できるようにまとめられている。文章は明快で用語は困難なものを避けるよう努めた。さらに,必要な専門用語については注釈をつけた。各節の終わりには参考文献が記載されているので,興味に応じて活用してほしい。
 最後に,この本は日本大学森林資源科学科の入門的な授業「森林資源科学概論」の教科書として編集されたものである。先に述べたが,学科の全教員がそれぞれの担当分野にかかわる題材をまとめたものであり,決して森林研究の体系を網羅したものではない。それぞれの内容には各執筆者の個性がにじみ出ている。森林の勉強については,教える側にも学ぶ側にも個性が欠かせない。そして,もっとも大切なのはフィールドであり,実物に触れることである。この本が読者の森林への興味をひきだし,日本の,そして,世界の美しい森林へ足を踏み入れる動機になってほしい。