「格差時代」の森林・林業と環境

―苦難と工夫 高知県からの報告―


「格差時代」の森林・林業と環境
依光良三, 川田勲, 笠原義人, 古川泰, 栗栖祐子
A5判 230>ペー>ジ 並製
ISBN978-4-88965-181-2 C0061
品切
奥付の初版発行年月:2008年07月
書店発売日:2008年07月25日

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内容紹介

危機にある林業県・高知の再生ビジョンを、最新の事例とともに示します。

目次

序 章  「苦難」の背景と高知県における森林・林業の独自対策
 第1節 林業・山村の貧困化と新たな構造問題の概略 2
   1 木材価格の暴落と林業・山村の貧困化 2
   2 大資本による新たな「秩序」 4
   3 森林・流域環境の問題の深刻化 7
 第2節 高知県の森林・林業対策の動向 9
   1 高知県の先駆的独自対策の背景―環境の時代と財政危機― 9
   2 主要な森林・林業政策関連の独自先行対策の概略 12

第1章 地域主体および協働型林業対策の事例
 第1節 香美森林組合における地域主体型団地化・集約化
      ―「森の工場」の先駆事例― 28
   はじめに 28
   1 香美森林組合の団地形成 29
   2 団地化・集約化の現段階と成果 31
 第2節 「協働の森づくり」と「コクヨ・四万十・結の森」 35
   1 企業との連携による循環型森林活用を目指す大正町森林組合の取組み 35
   2 地域の概況と森林組合 37
   3 集成材工場の設立と資源の有効活用 40
   4 大正町森林組合と「コクヨ・四万十・結の森」 43
   5 森林管理継続のための条件と「コクヨ・四万十・結の森」プロジェクト 48
 第3節 コープ自然派の取組みと嶺北流域 51
   1 新たな視点からの木造住宅供給システムへの取り組み 51
   2 コープ自然派事業連合とシステム成立の経緯 52
   3 コープ自然派事業連合の住宅供給システム 54
   4 自然の住まい協議会と住宅供給システム
      ―自然派コープ住宅供給システム― 56
   5 循環型社会を目指す嶺北流域とコープ自然派住宅
      ―れいほくスケルトンの開発― 61

第2章 環境を軸とした地域林業と森林づくり―檮原町の取組み―
 第1節 これまでの林業・森林づくりの展開 66
   1 時期区分 66
   2 FSCの取得の背景とプロセス 69
 第2節 FSC認証の現状とその効果 71
   1 FSC認証林の推移 71
   2 FSC認証材生産の現状 75
   3 木材の地産地消 78
 第3節 資源活用の新たな展開 80
   1 木質ペレット事業 80
   2 「都市との交流・グリーンツーリズム」としての森林活用 84

第3章 四国における木材市場と新たな供給体制
 第1節 四国の木材需給と流通構造の特徴 96
   1 人工林資源の高齢級化と商品化の課題 96
   2 四国の製材工場と製材用素材入荷動向 97
   3 四国の広域かつ交錯的原木流通 99
   4 原木市売主軸の国産材流通 100
 第2節 大手需要資本の国産材依存・利用と木材市場再編の波
      ―住友林業(株)クレストの合板工場と流通再編― 104
   1 大手木材需要資本の国産材への進出 104
   2 住友林業フォレストサービス(株)のストックヤードと流通再編 107
   3 国有林の伐採生産と流通の大型化―素材供給とシステム販売― 109
 第3節 四国の「新生産システム」と木材供給体制の構築 112
   1 四国地区の新生産システムの取組み概要と特徴 112
   2 高知県中部・東部モデル地域の取組みと森の工場構想 117
 第4節 今後の課題 122

第4章 流域の環境保全問題―森・川・海の寸断化の中で―
 第1節 著しく悪化した現代の流域環境 126
   1 森・川・海の寸断化の歴史と現代 126
   2 頻発する山地災害と劣化する河川と海
      ―豪雨常襲地帯・高知県の現状― 129
 第2節 高地西南豪雨災害とサンゴ問題 131
   1 宗呂川流域で大きな被害 131
   2 竜串湾のサンゴの被害と山林崩壊 133
   3 竜串自然再生事業と「協働」 135
 第3節 物部川流域の環境保全問題 
      ―森・ダム・川の劣化とアユ危機問題― 140
   1 連年の豪雨災害で危機に陥った物部川 140
   2 生物多様性の貧困化とアユの危機
      ―連年災害のもたらしたもの― 144
   3 「物部川方式」の河川環境保全 149
 第4節 ニホンジカの増加と新たな流域環境の危機
      ―深刻化する物部川源流の自然林被害― 153
   1 ニホンジカ増加の要因と被害 153
   2 奥物部・三嶺の森で急速に進む被害 159
   3 住民主導型シカ対策の組織化 163

補 論 四国の国有林の変遷と現状
 はじめに ―四国国有林の位置― 170
 第1節 四国国有林の歴史(1998年の抜本的改革まで) 173
   1 旧藩期《1601年-1867年・270年間》 173
   2 国有林経営の確立期、「明治・大正・昭和初期」
      《1882年-1930年・50年間》 174
   3 国有林戦時増伐・造林低迷期、「昭和戦前期」
      《1931年-1944年・15年間》 176
   4 戦後復興・再編期《1945年-1949年・5年間》 177
   5 高度経済成長期《1950-1973年・25年間》 177
   6 低成長期《1974-1998年・25年間》 181
 第2節 抜本的改革、そして行革推進法による国有林野事業独法化の動き 186
   1 新21世紀、「抜本的改革」期《1999年-2005年・6年間》 186
   2 行革推進法による国有林野事業独法化の動き
      《2006年-08年・3年間》 191
 第3節 地域の国有林の歩みと流域保全(1885-2005年) 193
   1 馬路村の国有林の歩み 193
   2 四万十川・物部川の流域保全の動向 199
 第4節 国有森林の地種区分廃止と機能区分再編
      ―四国国有林を事例に― 202
   1 地種区分 202
   2 森林の機能別類型区分への転換 203
   3 三機能類型への再編と木材生産林の全面的否定 205
   4 自然的、生態学的立地区分を 207
 第5節 日本の国有林経営はなぜ破綻したのか? 208

前書きなど

はしがき
 現代は、巨大した多国籍・グローバル企業の大競争と市場支配、ならびに国家による独占的資源戦略、そしてヘッジファンドや石油等の資源国を含む政府系ファンドなどの投機マネーによる金融市場の攪乱等によって、大きな不公平や格差を生み出す「悪しきグローバル資本主義」ともいわれる段階に至っている。
 この地球規模での枠組みの変化と世界経済の拡大のもとで、近年、「資源インフレ」が戦略的ないしは投機的につくり出され、石油、小麦、大豆、トウモロコシなど、生活の基盤となる物資の大幅な高騰を招いている。その結果、資源を持つ国と持たない国、富裕層と貧困層の二極化をともなった格差はますます広がっている。
 日本国内においても、大都市圏と地方、都市と山村、大企業と中小企業、内部留保を増やす大企業と低賃金の非正規労働者など、いろいろな局面で格差が著しく広がり、「格差社会」と呼ばれるほどの状況に至っていることは周知のとおりである。
 これらは、一面ではWTO体制のもとで進められた、安価な農林産物や工業製品の輸入増といった市場メカニズム優先のグローバル化に起因する。それと同時に、バブル期及びその後の「失われた10年」の間の国家政策の誤りは、巨額の債務をつくった。政府が「行政改革」、とりわけ弱者切り捨ての強引な「三位一体構造改革」によってそのツケを支払おうとしたことも格差拡大の要因となり、「地方分権」・交付税削減、規制緩和等によって、格差の被害を受ける弱者サイドはますます貧困化の途をたどることとなった。
 このような、グローバル化、格差社会、合理化再編、地方の危機、貧困化等のキーワードで表される今日の状況は、森林・林業・山村にも色濃く影を落としている。
 本書は第1に、こうしたいわば「格差時代」の中で、苦難に陥った典型的な地方である高知県の動向と再生に向けての県および地域の取り組み・工夫について報告するものである。事例では全国的にみても優れた取り組みを紹介している。第2に、疲弊する林業・山村のもとでの森林の荒廃、それにグローバル経済の急拡大の影響を受けた地球温暖化(自然の凶暴化とニホンジカ増加)とも関連して、悪化する流域の環境保全問題について報告する。第3に、「行革推進法」下での国有林の「改革」と現状、今後の独法化に向けての課題についてふれる。
 なお、本書は1980年代半ばの緑・森林保護運動の高まりの中で設立された国民森林会議等の地方版として、高知大学教員をはじめ民間有志等によって設立された「高知県緑の環境会議」の設立20周年記念出版事業として企画されたものである。

   2008年5月 高知県緑の環境会議森林林業研究会  依光 良三

担当から一言

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