森林管理制度論


森林管理制度論
志賀和人 編著
A5判 346ページ 並製
ISBN978-4-88965-247-5 C0061
在庫あり
奥付の初版発行年月:2016年09月
書店発売日:2016年10月07日

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内容紹介

複雑多岐にわたる森林・林業問題にアプローチするための新たな入門書。気鋭の研究者5名が現代的課題を独自の視点で読み解く。

目次

はじめに
序章 森林管理制度論の研究対象と方法 志賀和人 
第1節 森林管理問題と林政研究 1
 1 森林管理制度論の射程 1
  (1)現代日本の森林管理問題 1
  (2)本書の視点と構成 6
 2 森林管理概念の変遷と林政学 8
  (1)森林管理の国際化と現代的管理 8
  (2)林政学の研究史と主要文献 11
  (3)林政研究と制度・政策の研究視点 14
 3 林業経済学の社会・歴史認識 16
  (1)林業経済学の社会認識 16
  (2)「森林社会」論・コモンズ論の歴史認識 17
第2節 近現代林政の展開と経路依存性 19
 1 森林利用・経営・管理の展開過程 19
  (1)森林管理の基層と時間軸 19
  (2)自給的利用段階の共同体的管理 20
  (3)林野所有権と利用権の歴史的推移 21
  (4)林野所有の形成と森林経営の展開 23
  (5)持続的な森林管理と森林法制 24
 2 近代日本林政の形成と虚構性 26
  (1)時期区分と制度変化の重大局面 26
  (2)近代林政形成期:官民有区分と森林法の成立 29
  (3)官林経営展開期:御料林・国有林経営と植民地開発 30
 3 戦後林政の制度変化と流転 31
  (1)戦後再編期:林政統一・戦後体制と制度変化 31
  (2)「生産力増強」期:国有林経営「近代化」と基本問題答申 32
  (3)基本法林政期:国有林累積債務と構造政策 34
  (4)基本政策期:「経営」主義林政と戦後性の軛 35
第3節 研究対象の特徴と制度論の方法 38
 1 研究対象の特徴と多様性 38
 2 新制度論と森林管理制度論の方法 41
 3 森林管理制度論の社会認識と制度変化 45

第1章 木材市場の展開と木材産業 立花 敏
第1節 一般経済と林業セクター 53
 1 分析の枠組み 53
 2 日本の近代化と経済発展 56
  (1)第2次世界大戦前 56
  (2)第2次世界大戦後 57
 3 国家経済における林業の位置づけ 59
第2節 木材産業の展開と外材依存 61
 1 木材需給と木材輸入 61
  (1)第2次世界大戦前 61
  (2)第2次世界大戦後 62
  (3)木材貿易の自由化 65
 2 木材産業の盛衰 67
  (1)第2次世界大戦前 67
  (2)第2次世界大戦後 70
 3 連携・統合への方向性 74
第3節 木材利用の変容と木材流通の変化 76
 1 木材流通構造の方向性:製材用材を例に 76
 2 交易条件の変化と木材貿易の方向性 78

第2章 市場経済と林業経営 志賀和人
第1節 森林管理制度と市場経済 83
 1 日本の森林管理と林業 83
  (1)森林・林業と森林管理 83
  (2)森林管理問題の地域的多様性 85
 2 保護・保全的管理と施業規制 88
  (1)保護地域のカテゴリーと管理方針 88
  (2)自然公園地域の地種区分と施業規制 89
  (3)保安林の指定と指定施業要件 90
  (4)国有林の保護地域管理と保護林 91
 3 森林資源の保続と育林投資 92
  (1)森林資源の構成 92
  (2)森林整備の展開と造林施策 94
  (3)林業経営統計と育林投資 97
  (4)土地純収穫・森林純収穫説の経営モデル 100
 4 人工林の循環利用と木材産業 103
  (1)素材生産と人工造林の地域動向 103
  (2)林業・木材産業・行政の組織間関係 105
第2節 森林所有と林業経営体 109
 1 林業経営体の統計把握 109
  (1)山林の所有と保有 109
  (2)林業センサスの調査客体と外形基準 121
  (3)2005年センサス体系の再編と問題点 112
  (4)林業事業体の区分と山林保有規模 114
 2 森林経営の事例分析 118
  (1)森林経営の長期変動と所有権移動 118
  (2)御料林・国有林と管理組織 119
  (3)公有林・入会林野と地域 122
  (4)大規模私有林と地主的資金運用 124
  (5)大規模会社有林と企業組織 126
 3 ドイツ語圏の森林経営 127
  (1)ドイツ森林経営統計の経営概念 127
  (2)オーストリア連邦有林 129
  (3)スイス・ゲマインデ有林の経営再編 130
 4 森林経営類型と日本的経営の脆弱性 135
  (1)経営類型と経営・財務管理 135
  (2)基本政策の経営ビジョン 136
第3節 中小規模私有林と森林共同組織 139
 1 森林共同組織の諸形態 139
 2 森林組合制度と森林組合論 141
 3 中小規模私有林と山村問題 143

第3章 林業担い手像の再構成 興梠克久
第1節 林家経営論の再構成 151
 1 林家の歴史的性格と分析視角 151
  (1)多様化する林業担い手像と自伐林業への注目 151
  (2)林家経営の歴史的性格 156
  (3)林家経営の分析視角 160
 2 林家の機能集団化と集落営林への道 163
  (1)林家の機能集団化 163
  (2)集落営林組織の設立 165
  (3)3つの視点からの評価 166
  (4)新しい集落営林への道程 167
 3 共有林管理タイプの集落営林 168
  (1)「手づくり自治区」の形成過程 168
  (2)住民による財産区有林の「自伐」的管理 169
第2節 林業事業体と林業労働力の基本問題 171
 1 森林・林業基本法下の林業事業体問題 171
  (1)林業政策の転換と林業構造ビジョン 171
  (2)林業事業体の生産資本への純化傾向 172
  (3)林業事業体の経営展開方向 174
 2 林業労働力の歴史的性格と政策展開 176
  (1)雇用近代化と森林組合作業班の端緒:1950~80年代 176
  (2)林業事業体の雇用戦略の多様化:1990年代以降 177
  (3)林業労働力の今日的存在形態 180
第3節 「緑の雇用」事業の展開過程と性格規定 181
 1 「緑の雇用」事業の成り立ちと展開 181
 2 「緑の雇用」事業の効果と課題 182
 3 「緑の雇用」事業の性格規定 183

第4章 森林の観光レク利用と地域資源管理 土屋俊幸
第1節 新たな市民的利用としての観光レク利用 187
 1 なぜ,観光レクと森林の関係に注目するのか 187
 2 森林管理における観光レクの位置づけ 189
  (1)登山の歴史 189
  (2)観光レクの意味 190
  (3)森林管理との関係 192
 3 観光レクの進展 194
  (1)第2次大戦後のレジャーブーム 194
  (2)登山ブーム 196
  (3)観光開発ブーム 197
 4 観光レクと公共性 198
  (1)ソーシャルツーリズム 198
  (2)自然保護運動の台頭 200
  (3)グリーンツーリズム,エコツーリズムの正統性 201
第2節 観光資本による観光レク開発の意味 203
 1 鉄道資本による観光開発の展開 203
 2 森林・山村への影響 206
  (1)森林・山村への影響 206
  (2)山村の自主開発 207
第3節 観光レクと公共的サービス 209
 1 社会資本としての観光レク 209
 2 自然公園・国有林・森林公園 210
  (1)地域制としての自然公園 210
  (2)国有林の位置づけ 213
  (3)森林公園の叢生 216
  (4)観光レク社会資本整備の貧困 217
第4節 地域資源管理の一環としての多面的森林管理 218
 1 地域資源管理論と多面的森林管理論 218
  (1)観光レク利用を支える社会資本の貧困 218
  (2)多面的森林管理論 219
  (3)地域資源管理論 221
 2 自然保護・レク利用と市民的管理 223

第5章 森林管理と法制度・政策 山本伸幸
第1節 近現代日本林政の基底 229
 1 近現代日本林政へのまなざし 229
  (1)近現代日本林政とは何か 229
  (2)近現代日本林政の6視点 231
 2 森林法の変遷 235
  (1)森林法の世界史的展開 235
  (2)日本における森林法の黎明と展開 236
  (3)森林法の現在 238
 3 国土保全政策のなかの森林 239
  (1)戦前期の保安林制度・治山事業 239
  (2)公共事業と戦後の保安林制度・治山事業 242
 4 資源政策の展開 244
  (1)営林の監督と森林計画制度 244
  (2)森林資源の助長 248
  (3)公有林野施策 253
第2節 伏流化する国有林政策 256
 1 国有林の確立 256
  (1)官民有区分と行政機構の発達 256
  (2)国有林野法の成立 258
 2 国有林経営の展開 260
  (1)国有林野特別経営事業 260
  (2)昭和前期の国有林 262
 3 戦後復興,高度経済成長と国有林 263
  (1)林政統一と特別会計制度の発足 263
  (2)林増計画と木増計画 265
 4 国有林と現代社会 266
  (1)自然保護運動の高まりと経営改善の動き 266
  (2)一般会計化へ 268
第3節 流転する日本林政 269
 1 生成期の産業政策 269
  (1)日本資本制勃興と産業政策の生成 269
  (2)戦前期産業政策の成熟 272
  (3)戦時経済下の産業政策 274
 2 基本法林政の時代 277
  (1)高度経済成長と木材産業・貿易施策 277
  (2)林業基本法と林業構造施策 279
  (3)地域林業施策から森林・林業基本法へ 283
 3 社会政策と環境政策 286
  (1)社会政策としての山村問題・労働問題 286
  (2)レク利用と自然保護問題 289
  (3)公害問題・地球環境問題 293

終章 戦後林政の克服と制度変化 志賀和人
 1 現代日本の森林管理と制度変化 299
  (1)近代林政の基層と戦後林政 299
  (2)地域森林管理の脆弱性と制度変化 302
  (3)基本政策の枠組みと法制度上の論点 304
 2 人工林育林投資の非流動性・不確実性の縮減 308
  (1)主伐・再造林と持続的経営の創出 308
  (2)資金循環の改善と政策論理の再構築 310
  (3)林業技術者の任務とキャリア形成 313
 3 森林利用・経営・管理の再定義と制度発展 316
  (1)土地利用・環境管理と地域的公共性 316
  (2)制度発展と住民的森林利用 318
  (3)森林所有と利用権の公共的制御 321
  (4)行政任務の再定義と組織再編 324

あとがき 333

執筆者紹介 335

索引 338

前書きなど

●「はじめに」から(抜粋)
 本書は,2011年から著者を中心に続けてきた研究会の中間的成果である。私自身が筑波大学で森林管理学や同演習,フィールド実習,大学院ゼミを担当するなかで,森林・林業問題研究や森林管理制度に関する適当な入門書が見当たらず,不十分なものでもまず何か形にして世に問うことが必要と考えた。森林・林業問題研究は,入門者にとっては頂上が雲海に隠れてみえないうえに登山口の標識もない踏み跡を自らの感性と経験を信じて登って行く覚悟と諦めが必要である。それでも尾根に辿り着いたところで,霧の晴れ間から見上げた峰々を遠望できた瞬間や他のルートからの登山者との思いがけない出会いが何よりの楽しみと醍醐味だ。そんな年寄りの感傷に共感してくれる学生も少なくなった現在,入門書を騙り行く手の厳しさをそれとなく示すことも遭難者を減らす効果が期待できるかもしれない。
 大学や研究機関の研究教育環境の変化により研究業績や大学院の学位授与,外部資金獲得の実績が厳しく問われるようになり,効率の悪い体系的研究や新たな方法論の提示が軽視される傾向にある。研究テーマ以外の大学院生への基礎教育も疎かになり,学会報告でも教員や中堅研究者による恥知らずと思える発表も見かけるようになった。
 個人的な想いとしては,55歳を過ぎた頃から統計分析や事例研究にあまり興味が持てなくなり,自らの研究が研究史や方法論において,どのような意味を持っているのか非常に気になってきた。林業団体から筑波大学助教授に47歳で赴任し,いま退職を目前にした研究生活の終盤で現代的森林管理制度論にどこまで迫れているかという想いがそれを強く意識させたように思う。私自身は団体職員として過ごした期間が長く,当時の経験の裏返しで現在の行政当局者に対しても失礼な表現があった場合は,現場で振り回され続けた当時の民有林関係者の仲間達を代表した相応のつぶやきとして,お許しいただきたい。
 本来は序章・終章のほか,第1章 森林利用と社会,第2章 森林・林業と市場経済,第3章 森林管理と法制度・政策の3章構成を想定していたが,第1章の森林利用と社会に関する分析は最終段階で担当者の都合のより割愛せざるを得なくなり,従来の林政学・林業経済学による分析と異なる新制度論的分析視点が後退した。また,各章の関係性や制度変化に対する分析視点の統合が不十分と言わざるを得ないが,それでも各著者とも理論や方法を重視しつつもそれを絶対視せず,対象の多義性を考慮に入れて実証的に現場を見つめ,研究を深化させる視点は共有できていると思いたい。
 林業経済研究者や大学院生,行政関係者だけでなく,森林・林業問題に関心を持つ近隣分野の読者からの忌憚のない批判により新たな森林管理制度論に結実することを期待している。

2016年9月30日
志賀 和人

担当から一言

複雑多岐にわたる森林・林業問題にアプローチするための新たな入門書。気鋭の研究者5名が現代的課題を独自の視点で読み解く。