新刊


森林管理の公共的制御と制度変化

スイス・日本の公有林管理と地域


森林管理の公共的制御と制度変化
志賀 和人 編著, 志賀 薫, 池田 友仁, 岩本 幸, 御田 成顕
A5判 536ページ 上製
ISBN978-4-88965-251-2 C0061
在庫あり
奥付の初版発行年月:2018年01月
書店発売日:2018年01月31日

書籍の購入

定価:5,000円(税込5,400円)

お支払い方法…郵便振替後払い/銀行振込

※ 携帯でご覧の方に:このショッピングカートは携帯からは使えません。セブンアンドワイなど携帯に対応している外部サイトからのご購入をお願い します

他で購入

購入についての詳細ページへ >>


内容紹介

スイスと日本の森林管理の比較分析からその歴史的背景や現行の法制度・政策と林務組織,経営システムの違いを実証し,地域視点から日本の戦後林政克服の方向性を示す。

目次

口絵
序章 森林管理の地域的基層と制度変化(志賀和人)
  1 研究対象と目的 19
   (1)森林管理制度の展開と公有林管理 19
   (2)森林・林業政策の展開と制度変化の様相 23
  2 先行研究と基本文献 27
   (1)森林法制史と比較制度分析 27
   (2)公有林管理と入会林野論 31
   (3)山梨県有林と保護団体 32
   (4)スイス林業と森林法制研究 34
  3 研究方法と構成 38
   (1)現代日本の森林管理と林政 38
   (2)山梨県有林の管理と森林利用 41
   (3)スイスの地域森林管理と制度展開 43
   (4)国家・市場経済・地域の相克と制度変化 47

第1章 現代日本の森林管理と林政
 第1節 日本林政と地域森林管理・利用規制(志賀和人)
  1 戦前期林政の経路依存性と林務組織 52
   (1)戦前期林政の重大局面と担当官 52
   (2)官林経営展開期の「経営」展開 55
   (3)戦前期「地方林政」と林務組織 56
  2 戦後林政と基軸施策の制度化過程 58
   (1)戦後林政の施策粘着性と政策ドメイン 58
   (2)戦後再編期:戦後林政の枠組み形成と国有林 62
   (3)基本法林政期:国有林累積債務問題と構造政策 64
   (4)基本政策期:「経営」主義林政の孤立化と地方分権 67
  3 基本政策による地域森林管理の限界性 70
   (1)森林資源の施業管理と主伐・再造林問題 70
   (2)造林補助・森林経営計画と素材生産・更新の不均衡 74
   (3)国土利用計画に基づく土地利用調整と森林地域 79
   (4)林地開発許可制度と市町村林道管理条例の制定 83
   (5)施業規制に関する許認可権限・行政監督の縦割錯綜性 87
 第2節 自然公園法による施業規制と森林所有者(池田友仁・志賀和人・志賀薫)
  1 国立公園地域の地種区分と施業規制 99
   (1)国立公園の森林管理に関する先行研究 99
   (2)自然公園法に基づく施業規制と公園計画 102
   (3)地域制国立公園地域における地種区分と施業規制 104
  2 秩父多摩甲斐国立公園における地種区分の再編 107
   (1)奥秩父における「自然保護」問題 107
   (2)2000年の地種区分見直し結果と主要地権者 108
   (3)地種区分の見直し過程と森林所有者の対応 111
  3 多摩川・荒川源流部の地種区分と施業実態 114
   (1)埼玉国有林・水道水源林・K林業における小班別地種区分 114
   (2)埼玉国有林・水道水源林の管理計画と施業区分 121
   (3)埼玉国有林第48~51林班の施業実態 124
   (4)水道水源林第49~51林班の施業実態 124
  4 阿寒国立公園・前田一歩園財団の天然林施業 127
   (1)「復元の森」の理念と歴史 127
   (2)前田一歩園財団の事業活動と収支構造 130
   (3)森林管理方針の確立と森林施業 133
   (4)森林施業体制の構築と針広混交林への誘導 135
   (5)現場技術者と経験知の継承 140
 第3節 森林認証の展開と日本の対応(志賀和人・岩本幸)
  1 PEFCの設立過程と欧州及び日本の対応 145
   (1)日本と欧州における行政・業界対応 145
   (2)森林認証問題の分析視点 147
  2 PEFCフィンランドの構築過程 148
   (1)フィンランド林業・林産業と森林認証 148
   (2)認証規格の検討・構築過程 149
   (3)グループ認証の実施過程 153
   (4)認証規格と資料収集ガイドライン 155
  3 SGEC森林認証の展開と業界団体 158
   (1)SGECの設立過程と推進主体 158
   (2)SGEC認証制度と認証規格の特徴 162
   (3)SGEC認証の普及過程 164
  4 PEFC相互承認の展開とSGECの対応 169
   (1)PEFC相互承認の拡大と欧州諸国 169
   (2)SGEC規格の国際化と相互承認 170
   (3)PEFC相互承認後のSGEC規格 172
   (4)相互承認後のSGEC認証の課題 175

第2章 山梨県有林の管理と森林利用
 第1節 山梨県有林の経営展開と利用問題(志賀和人)
  1 山梨県有林の管理と経営展開 180
   (1)森林利用の制度化と保護団体 180
   (2)多面的利用と土地利用条例の制定 184
   (3)県有林管理と森林施業 185
  2 山梨県有林の利用問題と地元関係 190
   (1)自給的・生業的森林利用と部分林 190
   (2)県有林の貸付と土地利用条例交付金 191
   (3)恩賜県有財産管理条例に基づく交付金 193
   (4)土地利用条例交付金と連合会特別会費 196
 第2節 保護団体の事業活動と財政(志賀和人・御田成顕・志賀薫・岩本幸)
  1 保護団体の組織と保護活動 201
   (1)組織と執行体制 201
   (2)保護対象森林と部分林 202
   (3)職員と専任看守人 204
  2 保護活動と「入会」統制 205
   (1)保護活動の実施 205
   (2)鳴沢・富士吉田保護組合の実態 206
  3 保護団体の財政構造と地元関係 207
   (1)保護団体の収支構造 207
   (2)財政規模による特徴と地元関係 209
 第3節 山梨県の林業事業体と林業就業者(志賀和人)
  1 山梨県の林業構造と林業就業者 212
   (1)山梨県の認定事業体と森林組合 212
   (2)林業就業者問題の分析視点 214
  2 県有林事業と請負事業体 215
   (1)県有林の事業発注と林業事業体 215
   (2)委託募集と緑の研修生の採用 217
   (3)認定事業体の事業基盤 219
  3 林業就業者の存在形態と労働条件 220
   (1)現業従業員の構成と新規就業者の採用 220
   (2)現業従業員の給与形態と年収 224
   (3)独立・起業と内勤・現業従業員 225
  4 林業事業体の雇用戦略と現業従業員の性格 225
   (1)現業従業員の年齢・学歴と居住地 225
   (2)就業動機と職場評価 227
   (3)安定就労の実現と年収 229
   (4)世帯構成と家庭・生活環境 233
  5 従業員組織と林業労働者の存在形態 235
   (1)調査対象事業体の特徴 235
   (2)南部町・富沢森林組合の従業員組織 236
   (3)民間事業体の従業員組織 238
   (4)林業就業者の存在形態と定着支援 239

第3章 スイスの地域森林管理と制度展開(志賀和人) 
 第1節 森林法制の展開と歴史的基層
  1 スイスの社会と国土利用 244
   (1)連邦とカントン・ゲマインデの関係 244
   (2)国土利用と山岳地域 247
   (3)社会的市場経済による政策運営 250
   (4)森林利用に関する住民意識 254
  2 森林管理の伝統と森林法制 256
   (1)スイス林業と森林法制 256
   (2)1876年高山地帯森林警察法 258
   (3)1902年連邦森林警察法と改正動向 260
   (4)ゲマインデ有林の森林施業計画編成 261
   (5)1991年連邦森林法の制定過程 264
  3 カントン森林法制と林務組織 265
   (1)連邦の上級監督権限と行政間関係 265
   (2)カントン森林法制と林務組織 266
   (3)林業技術者の教育・再教育制度 269
 第2節 近自然循環林業の資源基盤と経営システム
  1 森林資源の地域構成と国産材生産 274
   (1)森林所有形態と私有林 274
   (2)木材需給と国産材生産の動向 277
   (3)森林資源の地域構成と森林機能 280
  2 森林資源の更新と森林施業 283
   (1)森林タイプと更新方法の変化 283
   (2)森林蓄積と成長量・伐採量の動向 286
   (3)林齢構成の変化と森林施業法 289
  3 森林経営組織と経営システム 294
   (1)森林経営主体と経営統合 294
   (2)経営基盤と投下労働 296
   (3)森林経営組合の組織構造と経営機能 298
   (4)森林経営の収支と資金循環 301
  4 ゲマインデ有林の経営事例 304
   (1)森林経営の表彰事例 304
   (2)市民ゲマインデ・ベルンの森林経営 306
 第3節 山岳地域振興と農政・空間整備・地域政策
  1 空間整備政策の枠組みと農政・地域政策 310
   (1)空間整備政策と部門別政策の関係 310
   (2)1980年代までの山岳地域政策の展開 312
   (3)地域政策の新展開と農政改革に関する研究動向 314
  2 スイス農政改革と直接支払いの再編 316
   (1)農業経営と農業従事者 316
   (2)戦後農政と地域・ゾーン区分 319
   (3)農政改革と連邦農業予算の動向 312
   (4)第1段階:連邦農業法改正による直接的所得補償の導入 324
   (5)第2段階:新連邦農業法制定によるエコ助成の拡充 328
   (6)第5段階:農業政策2014-2017による直接支払いの再編 331
  3 地域政策の新展開と山岳地域政策の遺産 335
   (1)山岳地域政策の再編過程 335
   (2)「地域政策の新たな方向」の提示 337
   (3)オーバーランドオスト山岳地域開発計画と地域事務局 339
 第4節 スイス連邦の森林法制と制度発展
  1 1902年連邦森林警察法の体系 345
   (1)森林法制の構成と制度変化 345
   (2)組織と罰則 346
   (3)公共的森林 348
   (4)私有林 349
   (5)森林面積の維持,増加 352
  2 1991年連邦森林法の体系 354
   (1)連邦森林法の構成と改正動向 354
   (2)第1章 総則 357
   (3)第2章 侵害からの森林保護 359
   (4)第3章 自然災害からの保護 363
   (5)第4章 森林の育成と伐採 364
   (6)第5章 助成措置 366
   (7)第6章 罰則 369
   (8)第7章 手続きと施行 370
   (9)第8章 付則 372
  3 Waldpolitik 2020に基づく政策展開 373
   (1)連邦新財政調整法に基づく2006年森林法改正 373
   (2)スイス森林プログラムと2012年森林法改正 376
   (3)Waldpolitik 2020と2016年森林法改正 380
  4 空間整備・自然郷土保護・森林政策のリンケージ 385
   (1)空間計画と森林計画の関係 385
   (2)連邦自然郷土保護法の体系と改正動向 386
   (3)森林計画制度改革と制度リンケージ 390
 第5節 カントン・ベルンの森林法制と林務組織
  1 カントン・ベルン森林法の体系 395
   (1)カントン・ベルン森林法制の歴史 395
   (2)1997年カントン森林法の構成と改正動向 395
   (3)森林政策の原則と森林の定義 398
   (4)森林の育成と伐採 401
   (5)侵害からの森林保護 404
   (6)自然災害からの保護 406
   (7)補助金 407
   (8)罰則及び施行・経過規程と付則 410
  2 カントン・ベルンの林務組織と任務 411
   (1)カントン森林法における任務規定 411
   (2)カントン林務組織と森林管理区 413
   (3)ラウターブルンネン森林管理区 418
  3 伐採許可の伝統と計画・補助制度の現代化 420
   (1)伐採許可の執行と林務職員 420
   (2)地域森林計画の策定過程と計画内容 423
   (3)森林における生物多様性保全対策 428

終章 国家・市場経済・地域の相克と制度変化(志賀和人)
  1 森林管理の歴史的基層と制度変化 433
   (1)森林管理制度の歴史的基層と政策ドメイン 433
   (2)多面的森林利用の展開と共同体的基層 441
   (3)現代日本の森林管理問題と制度的課題 446
  2 戦後林政の克服と地域森林管理 452
   (1)地域森林管理視点からの制度改善と林政研究 452
   (2)情報基盤としての森林・林業統計と年次報告の改善 455
   (3)戦後林政の克服と1951年森林法の基本問題 458
  文献目録 466
  付属資料 483
   1991年スイス連邦森林法 483
   1997年カントン・ベルン森林法 498
   No.132ラウターブルンネン森林管理区契約 511
  あとがき 515
  執筆者紹介 518
  略語一覧 520
  索引 523

前書きなど

●「はじめに」から(抜粋)
 本書は,2016年9月に発行した志賀和人編著(2016)『森林管理制度論』を概論編とした森林管理制度分析の第2作目の実証分析である。『森林管理制度論』で提示した制度的具体性を理解いただき,体系的批判をいただければ幸いである。全国森林組合連合会の職員から47歳で筑波大学助教授に転職し,出発の遅い研究者としての途を歩み始めた当時,林業経済学会の原理主義的研究への違和感から時間と空間・アクターの具体性を踏まえた実証分析に徹したいと考えたが,いまとなっては若気の至りの妄言に終わっているのかもしれない。
 スイスの森林法制に接し,それまで興味のなかった日本の森林法の歴史に改めて関心を持ち振り返ると戦前期に高橋琢也や村田重治,太田勇治郎らが自らの信念を国家の森林管理制度に具現化できた時代は終わり,最近は組織人として優秀な官僚の繰り出す「政策」と地域実践,研究との溝は深まるばかりであると感じた。少なくとも私が全森連で体験した24年間の林野庁と地域,林業経済研究の関係は,私にとってそのようにみえた。都道府県や林業事業体で働く民有林関係者には,私のように国の制度・政策に振り回されて生涯の時間を無駄にすることなく,確かな歴史観と社会観を持った地域実践を積み重ね,現代的課題への取り組みを進められる制度にしたい。本書が当事者性を意識した研究や地域で横糸を織りなす様々な実践に貢献し,中央主導の縦糸論理に制度変化をもたらす一矢となればと密かに期待している。奈良県農林部がカントン・ベルン及びリース森林教育センターと提携し,検討を進めている「紀伊半島の新たな森林管理あり方検討会」に検討委員として実践接点を持てたことは,もう1つの林政追求への若干の確信を深めることができた。

2018年1月8日
志賀 和人

担当から一言

スイスと日本の森林管理の比較分析からその歴史的背景や現行の法制度・政策と林務組織,経営システムの違いを実証し,地域視点から日本の戦後林政克服の方向性を示す。