スギの新戦略1 住宅市場開拓編
遠藤 日雄(編著)
A5判 354ページ 並製
定価 2,619円 (本体価格 2,381円)
ISBN978-4-88965-115-7 C3061
在庫あり
奥付の初版発行年月 2000年01月 書店発売日 2000年01月01日
紹介
日本のスギを泣かすな! 外材に対抗しうるスギの利用・供給体制を描き出した好著。豊富な事例紹介をもとに、国産材復権の可能性を示す。(「スギの新戦略2」は品切れ・絶版となりました。)
目次
プロローグ—日本のスギが泣いている—(遠藤日雄)
第1章 住宅ビッグバン—これからの住宅市場と生き残りの条件—(高木郁生)
第2章 スギの使いやすさと使いづらさ—乾燥問題を中心に—
第1節 設計者からの注文(三澤文子)
第2節 施工者からの注文(相原庸夫)
第3章 木造住宅とスギ
第1節 スギは住宅のどこで使われているのか(坂野上なお)
第2節 スギ集成管柱の市場参入は可能か? —住宅産業の評価—(嶋瀬拓也)
第4章 スギの流通—再編の行方と可能性—
第1節 流通再編の現状と影響—プレカットを中心に—(加藤滋雄)
第2節 流通業界に求められていること(鈴木 武)
第5章 乾燥材ニーズに対応した新しい取り組み
第1節 スギ葉枯らし乾燥材の生産販売—熊本県・(有)泉林業の取り組み—(遠藤日雄)
第2節 スピドラによる製品乾燥と販売—熊本県森連の取り組み—(小野田法彦)
第3節 日本一の国産材工場のスギ天然乾燥—福島県・協和木材i株)の取り組み—(遠藤日雄)
第4節 有力製材工場の人工乾燥—宮崎県・木脇産業の取り組み—(遠藤日雄)
第5節 人工乾燥化システムと性能表示—中部機械製造の取り組み—(遠藤日雄)
第6節 含水率・強度表示に取り組む(小野田法彦) <1> 奈良県・高田木材協同組合
<2> 静岡県・富士ひのき加工協同組合
第6章 スギ集成材への取り組み
第1節 三陸木材高次加工協同組合(小野田法彦)
第2節 青木國工務店(遠藤日雄)
第3節 常盤林業(株)の取り組み(遠藤日雄)
第7章 スギの新しい商品化
第1節 スギLVLの(株)サンテック(小野田法彦)
第2節 スギも視野に入れる新栄合板工業(株)(小野田法彦)
第3節 スギ中目材を活かしたSBハウス(小野田法彦)
第4節 「柱壁パネル」の日本プレローグ工業会(小野田法彦)
第5節 スギチップによるMDF(N&E社)(小野田法彦)
第6節 スギ内外装材の天竜ウッドヴィレッヂ協同組合(小野田法彦)
第8章 製品が変われば売り方も変わる(遠藤日雄)
エピローグ(遠藤日雄)
前書きなど
20世紀最後の10年間は、グローバル化が一挙に加速された時代であった。ソ連の解体以降、社会主義の崩壊が資本制経済の独り勝ちにつながり、市場経済が急速にグローバルな広がりをみせ始めたからである。この結果、世の中が地球規模で国際化し、モノやカネが国境に関係なしに流れるようになった。
スギも例外ではない。現在、日本には地球上の130ヵ国から木材が輸入されているという。1998年6月末の国連加盟国が大小合わせて185ヵ国だから(『’98/99世界国勢図絵』、国勢社)、実にこれらの国の7割から木材が輸入されていることになる。編者(遠藤)は1999年2月、宮城県石巻港で、南アフリカ共和国から輸入されたという100年生のスギ丸太を見る機会があった。輸入元の問屋に「価格は?」と尋ねたら、「石6,000円で入る」という答えが返ってきた。 単価に換算して約2万1,600円、日本のスギ林所有者が聞いたら失神しかねない驚くべき低価格である。これだけでも、グローバル市場経済の過酷な現実の一端が窺い知れようというものである。
行きすぎた市場化、自由化一辺倒のグローバル化の無条件受容はできない。それがどんな結果をもたらすかは、アジアの経済危機をみれば一目瞭然である。特に、日本のスギの場合、背後に市場原理が浸透しにくい私的森林経営を抱えているだけに、問題は一層深刻である。それでは、グローバル化に意識的に目を反らしたらどうなるのか。答えは簡単、その時点でスギは市場から排除されるだけのことである。
こうした過酷な現実の狭間で、日本のスギのアイデンティティを確立していくためにはどうしたらいいのか。これが本書の課題である。
著者プロフィール