森林組合論
地域協同組合運動の展開と課題
小川 三四郎(著)
A5判 216ページ 並製
定価 2,409円 (本体価格 2,190円)
ISBN978-4-88965-174-4 C0061
品切れ・重版未定
奥付の初版発行年月 2007年08月 書店発売日 2007年08月20日
解説
山村の多様な資源を活かして地域住民の暮らしと雇用を支える森林組合本来の姿を追究した1冊!
紹介
山村の多様な資源を活かして地域住民の暮らしと雇用を支える森林組合本来の姿を追究した1冊!
目次
はじめに 3
序 章 本書の構成 11
第1節 本書の目的と概要 13
第2節 本書の構成と事例分析の対象とする森林組合の特徴 18
第1章 森林組合の協同組合性に関する先行研究と生産組合の動向 23
第1節 森林組合と労働者協同組合をめぐる論考 25
1 協同組合世代論の提唱とワーカーズ・コープ 25
2 山村の資源管理と労働者協同組合 27
3 森林組合の機能と労働者協同組合の役割 28
第2節 林業に関係した生産組合の動向 29
1 生産組合の動向 29
2 緑の雇用担い手育成対策事業と生産組合 30
第3節 生産組合の新たな事例(農事組合法人大西農業生産組合) 32
1 組合員 33
2 歴 史 34
3 経営の現状 34
4 今後の課題 36
第2章 森林組合の経営規模拡大と構造変化 39
第1節 森林組合の経営規模拡大対策 41
第2節 森林組合合併助成法と広域合併の展開 42
第3節 森林組合系統運動と森林組合政策の展開 47
1 「森林組合活動21世紀ビジョン」の実績 47
2 「森林組合改革」プランの推進 49
3 中核組合の設定と1県1組合の推進 51
4 林業構造改善事業の交付金化 54
5 「環境と暮らしを支える森林・林業・山村再生運動」 55
6 2005年の森林組合法改正 56
第4節 森林組合の事業活動と作業班組織の動向 57
1 森林組合の事業活動の動向 57
2 森林組合の取得免許の傾向 59
3 森林組合作業班員の就業動向 61
4 森林組合の事業活動の現状と課題 68
第5節 森林組合の経営規模と構造 69
1 森林組合の経営規模の変化 69
2 森林組合の経営構造 73
第3章 静岡県龍山村森林組合の先駆性と限界 79
第1節 組織と事業の概況 81
第2節 市町村合併の動向 83
第3節 事業の多様化と地域雇用の創出 84
1 林業労働者の組織化 91
2 非木材生産事業の展開と在村婦人層の雇用 92
3 林業労働者による自主的な格付賃金制度の創設 96
4 住宅部門への進出 97
5 地域雇用の最大化 98
第4節 森林整備事業への特化と地域雇用の減少 99
1 本格化した森林整備事業の実施 99
2 加工場の拡充と高性能林業機械の導入 101
3 非木材生産事業の廃止 103
4 部外事業への依存傾向と現状 104
第5節 龍山村森林組合の現状 105
第4章 秋田県旧秋ノ宮森林組合における新たな取り組みと展開 109
第1節 旧組合の概況と合併反対の経緯 111
第2節 不振を極めた組合経営 114
第3節 加工事業を中心とした組合経営 116
1 加工場の再建 116
2 加工場および直売店の一般開放 123
3 加工事業と木材生産事業の推移 123
第4節 加工事業の従事者対策 127
1 加工場および直売店の雇用状況 127
2 加工場常勤従業員の特徴 128
第5節 加工場が成功した要因と課題 132
第6節 雄勝広域森林組合への吸収合併と加工場の有限会社化 134
1 市町村合併と森林組合合併の動向 134
2 加工場の有限会社化 136
第7節 加工場の有限会社化と組合合併の課題 139
第5章 宮城県登米町森林組合にみる小規模組合の可能性 143
第1節 組織と事業の概況 145
第2節 町合併と森林組合合併の動向 147
第3節 組織基盤形成および拡大造林と林産事業の展開 147
1 赤字組合からの脱却 149
2 経営基盤等の強化計画 152
3 拡大造林と林産事業の主軸化 154
4 機械化の推進と広葉樹の活用 163
第4節 森林整備事業の実行と販売・加工事業の展開 167
1 森林整備事業の実施 167
2 非木材生産物の販売・加工事業の展開 168
3 簡易牛舎キットの開発と大工組合の組織化 173
第5節 新たな商品開発と多様な事業展開 174
1 高性能林業機械導入と林業機械化特別班の設置 174
2 素材生産量と労災発生率および林業機械化特別班の推移 177
3 プレカット加工施設の整備 178
4 特産事業の創設による商品開発と生産組織 179
5 執行体制と就業規則の特徴 186
第6節 小規模経営の優位性を活かした水平的拡大 187
終 章 総 括 189
第1節 3つの森林組合事例からみる労働者集団・生産組織の動態と課題 191
第2節 森林組合の性格と労働者協同組合運動の展望 196
第3節 労働者集団・生産組織の発展と森林組合の条件整備 202
参考文献一覧 207
前書きなど
「はじめに」から
筆者は学生時代に、森林組合を研究課題として持ち、協同組合運動の実践に携わっていきたいと考え、全国森林組合連合会へ就職した。これまでの勤務期間に、北海道から沖縄に至る全国各地の森林組合や都道府県森林組合連合会、市町村役場、都道府県庁、そして霞が関にある中央省庁、国会をはじめとする永田町など、数多くの現場と、国家行政の中枢近くの実情に触れる機会を持つように努めてきた。つまり、様々な現場で生産活動を行う現場の人々と、政府がどのような過程を経て政策を策定していくかについて、目の当たりにしてきた。
現在の林業を産業として成り立たせようとしている構造の一方において、国民本位の民主的な国家、市民のための法律はどのような手段によって実現できるのだろうか。その手段の1つとして、本来的な下からの協同組合運動の実践に可能性はあるのか。山積する課題と向き合いながら、更なる実態調査と研究蓄積が必要なことを痛感している。
こうした問題意識の中で、特に森林組合法制度の最大の欠陥について問題提起し、その解決の道を提示したく、問題と論点を整理しながら実証を試みたのが、学位申請論文「戦後森林組合における地域協同組合運動の展開に関する研究 林業の生産組合・労働者協同組合論」であった。本書は、同論文、および関連する学術論文等を含め、大幅な加筆修正と再構成を行い、出版の運びとなったものである。
著者プロフィール