森をゆく
「人と森のかかわり」を訪ねて
米倉久邦(著)
四六判 222ページ 並製
定価 1,885円 (本体価格 1,714円)
ISBN978-4-88965-200-0 C0061
絶版
奥付の初版発行年月 2010年06月 書店発売日 2010年06月23日
解説
60歳の定年を機に百名山を踏破した男が、新たな頂に挑む! 森の豊かさと危機の実態を伝える渾身のルポ。
紹介
60歳の定年を機に百名山を踏破した男が、新たな頂に挑む! 森の豊かさと危機の実態を伝える渾身のルポ。(社)日本図書館協会選定図書(平成21年7月21日選定)
目次
刊行によせて(森林インストラクター東京会会長 石井誠治) 3
はじめに 5
地 図 16
東京大学北海道演習林 19
科学する北方の大森林 19 /どろ亀さんの林分施業法 21 /理想の森林へ木を伐る 23 /エゾマツの倒木更新 26 /どろ亀さんが愛したミズナラの大木 28 /トドマツの凍裂 30
白神山地 33
林道反対運動が世界遺産へ 33 /傷残すブナ伐採の歴史 35 /核心部から消えた杣小屋 37 /絶たれた森との共生 39 /野放しのイワナ密漁 41 /ブナの森は輪廻の世界 44 /マタギの付けたナタ目 46 /世界遺産はだれのため 48
東京都水道水源林 53
100年前は荒廃の山 53 /森林を襲った過酷な運命 55 /森林再生へ苦闘の歴史 57 /シカが森を食べる 60 /シカと共存はできるか 63 /森林再生に活躍する森林隊 65 /奥多摩の森は巨木日本一 67
長野県信濃町・癒しの森 71
町と市民が案を練った 71 /まず、人づくりから 73 /森に癒しの効果はあるのか 75 /雑木林が癒しの空間に 77 /トレーナーは森の魔術師 79 /人には森のDNAがある 81 /癒しの宿のおもてなし 83 /モデルはドイツのクナイプ療法 85
富士山 89
孤高の山に独自の植生 89 /這い登る先駆植物たち 92 /森林限界に生きる 93 /見事な樹木の垂直分布 96 /森林復活に1000年 98 /樹海は特異な環境に成立 100 /取り残された古代の森 102 /イヌブナの巨木達 104 /吉田口登山道は巨木の森 106 /85年ぶりに古道復活 108 /変化に富んだ須山古道 110 /満ちるダイナミズム 112
京都大学芦生研究林 115
西日本有数のユニークな天然林 115 /豪雪がつくった芦生スギ 117 /動物たちとの熾烈な闘い 119 /立ち枯れるミズナラの大木 122 /ナラ枯れ病は人災ではないのか 124
奈良県吉野林業地 127
吉野スギを育てた樽丸林業 127 /貧しさが生んだ山守制度 130 /変容する山守制度 132 /伝統の間伐術が銘木をつくる 134 /勘と経験の作業を現場でみた 137 /コストのかかるヘリ搬出 140 /手間とヒマをかける林業は岐路に 142 /作業道を造る 144 /だれでもできる林業を 146
宮崎県綾の森 149
日本一の大照葉樹林 149 /照葉樹林伐採の通告 151 /照葉樹林文化論で武装 153 /町長の粘り腰が勝った 155 /渓谷を覆う大照葉樹林 158 /着生ランや妖精のいる森 160 /照葉樹林帯を横切る送電鉄塔 163 /照葉樹林帯復元の大計画 165
鹿児島県屋久島 169
日本の森が凝縮された島 169 /海岸部には亜熱帯の森 171 /スギが主役の森になった 173 /島が育む超長寿のスギ 175 /500年に及ぶ伐採の歴史 177 /森林破壊から保護へ 180 /貴重な資源、土埋木 182 /風雪と闘う白骨樹 184 /水が生むもののけ姫の森 187 /生き延びた屋久スギ達 189 /不思議な存在感の縄文杉 192 /縄文杉の樹齢ミステリー 194
沖縄やんばるの森 199
ずば抜けて豊かな生態系 199 /長い収奪の歴史 201 /イタジイが守護神 204 /森に不思議な住居跡 206 /ヤンバルクイナの棲む森 208 /危機にある固有種の宝庫 210 /森を破壊するマングース 212 /林道、ダム、破壊の歴史 214 /轢き殺される生き物たち 216
あとがき 219
前書きなど
はじめに
百名山登頂を終えた後、次の目標を「森」に定めようと思った。日本人と森との深い関係に気が付いたからだ。森を歩きたいという欲求は、もしかしたら、自分の中にある日本人のDNAの仕業かもしれない。それを確かめるためにも、日本列島の森を訪ねることにした。
一口に森といっても、列島の森林は一様ではない。さまざまな、多彩な森がある。日本の森林はその自然環境に応じて実に多様性に富んでいる。
もうひとつの大きな特徴は、人と森との「かかわり」だ。日本には、まったく手付かずの原生林というのははほとんどない。人は縄文の時代から森に分け入り、その恵みを受け、森とともに暮らしてきた。日本人は森を神として尊崇し、共生してきた。森とのかかわりの長い歴史が培ってきた独特の森林観である。
日本の森を歩き、それぞれの森がどう人とつき合ってきたのか、どんな問題を抱えているのか、どんなに素晴らしい森なのか、さまざまな角度から、その森の姿に自分なりの光を当ててみたい。
2010年5月 米倉 久邦
著者プロフィール