地域森林管理の主体形成と林業労働問題
志賀和人(著/文 他) / 藤掛一郎(著/文 他) / 興梠克久(編著)
A5判 425ページ 並製
定価 3,143円 (本体価格 2,857円)
ISBN978-4-88965-205-5 C0061
在庫あり
奥付の初版発行年月 2011年02月 書店発売日 2011年02月15日
目次
刊行に寄せて3
はじめに4
執筆者一覧13
序章 林業経営と林業労働対策の現局面15
第1節 現段階の森林管理問題と林業就業者17
1 森林・林業再生プランと林業就業者17
2 森林管理における長期持続性の構造転換26
3 本書の分析視点と方法33
第2節 国産材活用期への移行と林業事業体38
1 近年の林業情勢38
2 林業労働への影響41
第3節 林業労働問題の現局面と課題46
1 林業事業体の雇用戦略と林業労働対策の変化46
2 「緑の雇用」事業の現状と課題48
3 林業労働対策の課題53
4 2000年代以降の中心課題とキャリア形成支援55
第1部 森林管理の枠組みと制度・政策展開59
第1章 林野政策の転換と林業事業体61
第1節 森林・林業基本法下の林業構造ビジョンと林業事業体63
1 林業政策の転換と林業構造ビジョン63
2 林業事業体の経営展開と多様な担い手像65
3 林業事業体の「経営改善」と「経営革新」─久恒森林─ 68
4 「経営革新」の時代へ73
第2節 国有林・道有林改革と林業事業体76
1 改革下における北海道国有林の施業動向と林業事業体76
2 北海道有林における森林施業の動向と林業事業体83
3 国有林・道有林の共通点と相違点90
第3節 機関造林の再編と林業事業体の経営的対応 ─岩手県における県行造林と公社造林を事例として─93
1 機関造林問題の分析視角93
2 岩手県における公社造林及び県行造林の展開と再編93
3 岩手県森林整備協同組合の新たな展開96
4 林業事業体の対応と新たな展開98
5 林業事業体の経営対応と再編に関する考察104
第2章 地方自治体の森林・林業政策と林業事業体107
第1節 自治体財政と森林・林業政策の展開109
1 森林・林業政策における国と地方自治体の関係109
2 森林・林業政策の財政支出111
3 地方自治体による森林・林業政策116
第2節 和歌山県の「緑の雇用」事業と事業体の対応119
1 和歌山県と「緑の雇用」事業119
2 環境林の整備120
3 「緑の雇用」事業による人口流動121
4 緑の雇用環境林創造事業123
5 組合独自の林業労働者採用方針づくり124
6 「緑の雇用」事業の今後の展開方針125
7 森林組合における中核現業作業班員の構成変化126
8 今後の課題130
第3節 熊本県における「緑の雇用」事業の展開 ─第1期対策から第2期対策へ─132
1 「緑の雇用」事業の評価の視点132
2 熊本県における「緑の雇用」事業の実施状況133
3 林業事業体の「緑の雇用」事業の評価139
4 「緑の雇用」事業の成果と課題143
第4節 財産区を核とした天然林利用と山村振興 ─山形県飯豊町中津川財産区を事例として─145
1 問題の所在 ─財産区と林業経営145
2 中津川財産区の概要148
3 中津川財産区の形成過程と管理規定149
4 中津川財産区の経営構造と組織体制151
5 森林経営と林業経営153
6 林業経営の担い手構想とその課題155
第3章 SGEC森林認証の展開と林業組織の対応161
第1節 森林認証問題とSGECの設立過程163
1 課題と分析視点163
2 SGECの設立過程と推進主体165
3 SGECの審査機関と組織運営171
第2節 SGEC認証の取得組織と普及メカニズム176
1 認証取得動向と対象業種176
2 森林認証取得組織の特徴と認証取得形態177
3 時系列的推移と普及メカニズム179
第3節 地域ネットワークの形成と認証材流通183
1 認証材流通と地域ネットワーク183
2 熊本県における地域ネットワークの創発的拡大185
3 地域ビルダーによる認証材調達187
4 小括 ―森林認証問題の現代的意味190
第2部 林業事業体の雇用改善と担い手問題195
第4章 林業事業体の発展と雇用管理197
第1節 認定林業事業体の全国動向 ─全国アンケート調査の結果から─199
1 調査の目的と方法199
2 林業生産の現状200
3 山林現場従業員の動向と特徴203
4 山林現場従業員の確保と定着208
5 今後の山林現場従業員の採用意向216
6 林業事業体の経営展開方向218
7 雇用改善の進展と課題224
第2節 林業事業体の雇用戦略と事業展開227
1 林業労働問題の変容227
2 近年の採用状況227
3 今後の雇用目標と事業意向231
4 まとめ238
第3節 森林組合の内勤従業員及び作業班体制と給与体系239
1 地域森林管理の担い手としての森林組合239
2 内勤従業員の職務240
3 内勤・現業従業員の賃金247
4 組織体制の課題248
第5章 素材生産の新たな展開と担い手問題251
第1節 素材生産拡大下の雇用の動向253
1 素材生産の拡大253
2 素材生産の機械化254
3 架線集材257
4 造林260
第2節 新素材生産方式の展開と林業就業者の熟練形成265
1 高性能林業機械化265
2 徳島県「林業再生プロジェクト」の概要265
3 林業事業体の経営概要266
4 高性能機械の作業体系と生産性の変化269
5 林業技術者の性格と熟練形成274
6 高性能林業機械化による雇用方法の変化277
7 経営及び雇用を巡る課題と対応方針278
第3節 新生産システムと素材生産業者・森林組合281
1 新生産システムにおける素材生産の位置づけ281
2 大規模加工事業体による素材生産業者,森林組合の原木調達機構としての再編285
3 大規模加工事業体の原木調達機構化と素材生産業者,森林組合289
第4節 大規模会社有林の管理経営構造と専門技術者 ─住友林業を事例として─294
1 CSRと森林経営294
2 住友林業グループのマネジメント体制295
3 社有林の形成過程と山林事業部門の設置298
4 山林事業の経営展開299
5 重層的な管理経営構造305
第3部 林業就業者の就業実態と再生産構造309
第6章 林業新規就業者の就業意識と離職者の実態311
第1節 林業新規就業者の就業意識 ─2007年全国アンケート調査の結果から─313
1 調査の趣旨と方法313
2 林業新規就業者の就業実態313
3 就業者像と就業意識の変化328
第2節 月給制導入に対する林業新規就業者の希望と事業体の選択332
1 月給制の導入332
2 給与形態と危険負担333
3 林業新規就業者の希望334
4 事業体の選択と地域労働市場337
第3節 林業新規就業者の転職要因 ─愛媛県を対象にして─342
1 転職者分析の必要性342
2 転職者の属性に関する統計的分析343
3 転職要因の分析Ⅰ─雇用サイドの認識─ 345
4 転職要因の分析Ⅱ─転職者の意向・アンケート調査結果から─349
5 転職の問題構造と対策の方向356
第7章 林業一人親方の今日的存在形態と政策課題363
第1節 労災保険特別加入制度と林業一人親方の全国的動向365
1 本章の目的365
2 労災保険特別加入制度366
3 林業における労災保険第二種特別加入者の動向368
4 林業一人親方団体事務局の経営形態369
第2節 一人親方団体の設立経緯にみる林業労働の課題373
1 一人親方団体設立経緯調査の目的373
2 一人親方団体設立経緯の詳細374
第3節 森林組合の労働力構成と林業一人親方の実態 ─大分県を事例に―377
1 本節の目的377
2 森林組合の労働力構成377
3 林業一人親方等請負人の就業実態379
4 請負労働力の課題384
第4節 林業一人親方の就業実態と再生産構造 ―福岡県Y地域を事例に―385
1 本節の目的385
2 調査の結果386
3 再生産の展望と労働力確保の方向性391
第5節 林業一人親方の問題と政策課題393
1 林業一人親方団体設立経緯にあらわれる林業労働の特殊性393
2 林業一人親方の問題と政策課題393
3 林業の多様な労働力と保護されるべき者397
終章 総括と展望 ─新たな地域森林管理と林業労働の可能性399
第1節 地域森林管理の枠組みと林業労働問題401
1 地域森林管理の主体形成と制度・政策401
2 長期持続性の源泉と林業経営組織における意思決定404
3 林業労働問題と林業事業体論の射程407
第2節 林業事業体による労働力の確保・育成410
1 雇用改善と機械化410
2 雇用の将来像412
3 雇用確保上の懸念416
第3節 林業新規就業者と林業一人親方の基本問題と展望419
1 林業新規就業者像の変化と雇用改善419
2 林業一人親方の基本問題と展望422
前書きなど
はじめに
本書は,全国森林組合連合会が厚生労働省の林業雇用改善促進事業を実施するなかで組織した林業雇用改善促進事業(調査研究事業)企画委員会委員と調査に参加した研究者が,「地域森林管理の主体形成と林業労働問題」をテーマに調査研究の成果をとりまとめたものである。林業事業体や林業労働の現状を全国的な視点から実証的に分析し,地域森林管理の担い手や林業労働対策に関する課題を包括的に分析した研究は思いのほか少ない。
本書では,第1部「森林管理の枠組みと制度・政策展開」,第2部「林業事業体の雇用改善と担い手問題」,第3部「林業就業者の就業実態と再生産構造」の3部構成により,その現状と対策を明らかにした。各年度の調査報告書を素材に3人の編著者が全体構成の組み立てを行い,16人の執筆者がその後の補足調査や現状の推移を踏まえて加筆,推敲を行っている。「林業労働」という伝統的で地味なテーマに大学院生を含めた所属組織の多様な若手・中堅研究者が結集し,林業の技術過程と林業事業体及び林業就業者に関する地道な実態調査に基づいた研究成果が刊行でき,そこに柳幸氏と藤原氏の学風が確かに継承されていることを素直に喜びたい。
2011年2月 編著者 志賀 和人・藤掛 一郎・興梠 克久
版元から一言
全国の林業就業者に対する地道な実態調査から、新局面を迎えている林業労働対策の方向を示す!
著者プロフィール