海外・国際問題4

日本国際林業関係論

戦後開発輸入の実証


日本国際林業関係論
萩野 敏雄
A5判 338>ペー>ジ 上製
ISBN978-4-88965-144-7 C0061
品切(絶版)
奥付の初版発行年月:2003年11月
書店発売日:2003年11月21日

コピーサービス

個人の方がご自身>の研究目的などに限定して閲覧を希望される場合に限り、コピーサービス(>当方でコピーし、簡易製本して郵送)をご利用いただけます。お申し込みは、書籍全 体、または目次の見出し単位でお願い致します。なお、一部書籍につきましては、都 合により、ご利用いただけない場合がございますので、ご了承ください。
 ご利用料金は、1ページにつき20円と簡易製本代600円が目安となります(税・送>料別)が、判型等によって若干異なりますので、事前にお見積もりが必要の場合はお 申し出下さい。お届けは、お申し込み日から7〜10日程度です。ご希望の方は、下記 リンク先ページをご参照の上、お申し込みください。

コピーサービス >>


内容紹介

日本はなぜ木材輸入大国へと変貌したのか。グローバルな勢力関係の中で形づくられてきた日本の実像を、丹念に解き明かした初めての本。GHQの対日木材政策など未発掘資料を満載!

目次

はしがき
序 論 国際林業関係論への接近 1
第1部 国際林業関係小史 7
 第1章 戦前期 8
  1 日本林政・林学の源流、「岩倉使節団」 8
  2 木材輸出国期の53年間 17
  3 海外林業・木材市場調査期の26年間 19
  4 木材関税抗争期の10年間 19
 第2章 今次戦後初期 32
  1 GHQの対日木材政策 32
   1 東アジアの木材基地化 33
   2 自国産材の輸出策36
   3 日本側の木材需給見通し38
  2 GHQの対日企業政策 45
   1 植民地国策会社の解散 45
   2 三井物産・三菱商事の解体 47
 第3章 外材環節の復活 53
  1 総合商社の急増 53
  2 開放体系の進行と外材 63
  3 第1外材環節・南洋材 66
   1 環節形成と主産地変化 67
   2 対米加工貿易制度の終末 75
  4 第2外材環節・ソ連材 78
   1 冷戦下の交渉と第1船入港 78
   2 輸入商社の変容 89
   3 K・S方式輸入の登場と消滅 95
  5 第3外材環節・米材 99
   1 前段階 100
   2 木材自給政策放棄の<昭和36年林政> 106
   3 第2次米材時代の現出 116
第2部 海外木材資源の獲得 125
 第1章 南北併進方策の誕生 128
  1 戦前期の開発輸入 128
  2 戦後新ベクトルの登場 134
   1 戦後開発輸入の特徴 134
   2 源流、王子製紙解体と3者 136
   3 原木対策の拠点、林総協の誕生 145
   4 先駆企業、南方林業の設立と挫折 149
 第2章 大型森林開発輸入の実現 157
  1 第1号 (アメリカ・アラスカ州) 157
   1 小林準一郎の着想と対米交渉経過 157
   2 開発対象のトンガス国有林 171
   3 現地世論の賛否 177
   4 日米交渉成立をめぐる諸事情 184
   5 アラスカパルプKKの誕生と終末 187
  2 第2号(インドネシア・東カリマンタン州) 190
   1 新興独立国・インドネシアと日本 190
   2 カリマンタン森林大型開発の日・イ交渉 196
   3 日本側開発会社の設立過程 214
   4 「生産分与方式」下の2社 226
   (1)カリマンタン森林開発協力KK 227
   (2)三井物産南方林業開発KK 233
   5 スハルト政権による外資政策転換 234
   6 カリマンタン森林開発協力KKの終末 242
  3 第3号(ブラジル・ミナスジエライス州) 244
   1 日本国内紙パルプ工場の公害多発 244
   2 日伯紙パルプ資源開発KKの進出 246
 第3章 紙バルプ産業の国際林業関係 251
  1 国産材期の動向 251
   1 戦後当初の2課題 251
   2 産業備林の造成 253
   3 工場新増設と原料問題 255
   4 “国産材離れ”の道程 261
  2 外材期の動向 269
   1 通商産業省の2原料指針 269
   2 南方早生造林の推進 277
   (1)試験造林段階 278
   (2)事業造林段階 284
  3 「木材パルプ・チップ用材」の輸入依存度 285 
第3部 現段階の諸問題 287
 第1章 重要視点 289
  1 <昭和46年転機>の国際性 289 
  2 森林資源論の再構築 292
 第2章 外材経済の変化 294
  1 その主な特徴 294
  2 南洋材環節のばあい 296
  3 米材環節のばあい 304
   1 地元工場の保護 305
   2 自然保護問題への対応 310
   3 カナダの森林開発型移行 312
 第3章 「持続可能な森林経営」の課題 314
  1 木材自給率との関連 314
  2 政府「長期木材需給見通し」と実績 315
  3 林業商品としての「製材用材」自給の重要性 320

前書きなど

 わが国は、いま世界最大級の木材輸入国と化した。それら輸入材の内容は、林業製品である米材、南洋材、ロシア材、ニュージーランド・チリ材などのほか、工業製品である欧州材にまで及んでいる。その欧州材は、スウェーデン、フィンランド、オーストリア、ドイツ産材などの集成材・同ラミナ・小割物である。もともと、アメリカ連邦有林および州有林丸太の恒久的禁輸措置のけっか生じた米材価格高騰を背景とし、代替材として登場したものが新たな使用価値を保有するにいたったのであるが、いっぽうこれまた工業製品である木材チップをみると、わが国は南半球における3大陸(南米・オーストラリア・アフリカ)まで重要な広葉樹材供給基地化するにいたっており、それにともない「国産材離れ」の趨勢は年一年と強まり、いま自給率はわず1割余に過ぎない。そのような工業製品としての木材(集成材・合板・繊維板など)と、在来の林業商品としての木材(丸太・角材・割材・板材)との使用価値をめぐる競合関係は、こんごどのような方法に向かうのか。打開の道を、どこに求めるべきか。
 いま、世界・地球を見据えた日本林業の将来像に思いをいたすとき、国際林業関係論研究の必要性を改めて痛感する。そのような強い問題意識のもとに、平成13年4月より執筆にほぼ専念した結果が本書である。
 全体は、戦後日本における国際林業関係の特徴がもっとも鮮明に現れている大型森林開発輸入を中軸に据える、3部構成をとった。戦前における「自由貿易か保護貿易か」の状況から、「開発輸入か商業輸入か」へ、基調変化するにいたったためである。いか、それらの内容にふれよう。
 第1部(第1章〜第3章)は、明治初年以降を戦前と戦後に分け、冒頭には、著者がかねてより日本林政・林学の源流と捉えている「岩倉使節団」の、ヨーロッパ大陸における森林・林制視察を冒頭にとりあげた。そして、そのような啓蒙期の最後を、戦前期最大の林業問題となった木材関税抗争で結んだ。戦後は2章に分け、まずこれまで誰からも取り上げられなかった、GHQの対日木材政策を実証的にあきらかにしたのち、戦後における総合商社の急増と深い関連をもつ財閥解体にふれた。そののち、戦前に名和統一の提起した環節概念を3大外材(南洋材・ソ連材・米材)に援用し、その再形成過程を総合商社との関連で捉えた。そして3外材環節の完結は、日本林政が木材自給政策の放棄を鮮明にした年次である、昭和36年とした。
 第2部では、大型森林開発輸入の3事例を、取りあげた。第1号はアメリカ(アラスカ州)、第2号はインドネシア(東カリマンタン州)、第3号はブラジル(ミナス・ジエライス州)と、それぞれ対象国が異なるが、前2者の発想は旧王子製紙系人物に端を発している。 ともに大規模な事業展開をみ、とりわけカリマンタン事業は「日本林野庁」版ともいえるものであったが、いまは2事業ともに姿を消し、大型開発輸入の難しさを如実に物語っている。だがしかし、帝政ロシアから買収した朔北の地とはいえ、戦勝国アメリカがなぜ敗戦国日本に自国森林開発を許したか、の持つ意味は重い。さいごの第3章では、わが国の木材需給の中で重要位置を占める紙パルプ産業の、「国産材離れ現象」を明らかにしている。そのことの持つ意味もまた、重い。もはや、林野庁「木材需給表」における「木材パルプ・木材チップ」は、木材自給率問題とは無縁といってよい状況にあるからである。
 さいごの第3部は、もちろん現代林政下にあるものの、まだ歴史として成熟していないと考えられる「昭和46年転機」以降を「現段階」と規定し,述べたものである。すなわち,著者の林政史上の時期区分である「前近代林政期」(明治元年〜29年)、「近代林政期」(明治30年〜昭和3年)および「現代林政期」(昭和4〜45年)に続くものである。まず第1章では、現段階をみるばあいの重要な2事項にふれた。昭和46年におけるドルショックに始まった世界的な諸影響と木材市況とはけっして無縁ではなく、また社会科学としての森林資源論も、とりわけ属性資源を中心として、いま再構築を必要とする段階に立ちいたっていることは論を要しまい。これまでの空疎な技術的通説から日本森林を開放する必要があるし、またいま国際的に容認されて進行しつつあるその擬制商品化を、許してはならない。つづく第2章では、いまわが国の外材経済の分野にみられる環節の衰退ないし融解化状況を明らかにした。この問題の行方は、もちろん重大な意味を持っている。第3章(終章)では、かねてより著者が一国林業の盛衰を知る端的な指標と考える、また「持続可能な森林経営」とも文脈をとおして直結している、木材自給率につきのべた。そこでの結論は、「森林及び林業の動向に関する年次報告」に述べられている、呪縛としての木材自給率の数字的無意味性である。
 以上であるが、実証を重んじる立場からして、資料の収集には全力をあげた。在職中から心がけて官庁資料を蓄積し、また古書購入に努力したこともあり、もちろん十分ではないが、最低のものは得られたと思っている。また聞き取り調査も、在職中から林業経済の分野では未開拓の大銀行、総合商社、海港市場等でかなりおこなった実績をもつ。さらに大型森林開発輸入構想に大きな役割を果たした小林準一郎翁(元王子製紙副社長)からも、直接に数多くお話をお伺いした。本書に価値ありとすれば、その多くは以上の実証中心への努力に負うている。
 いま回顧すると、昭和30年初頭に北洋材問題に取り組み始めていらい、日本林業を取り巻く関係国をつぎつぎに取り上げた。その著書は、『北洋材経済史論』、『南洋材経済史論』、『朝鮮・満州・台湾林業発達史論』、『日本軍政と南方占領地林政』、および 『日露国際林業関係史論』、の5冊であるが、それらをまとめるとき、孤立的ではなく、つねに日本林業を念頭に置き、それとの関わりを考えつづけた。関係論としてまとめた本著書は、愚直ながらもとりつづけてきた、そのような方法論に基づく集大成と言ってよい。本書をもって、約半世紀のあいだ持ち続けてきた問題意識を、いまようやく処理しえた感が深い。
 本著書の執筆に取りかかったのが平成13年4月であることから、2年5カ月で脱稿したことになる。その間、執筆作業にほぼ専念したにもかかわらず、行政の職場を離れて久しいこともあり、貧しいものとなったが、いまはこれで措かざるをえない。意図したものとの隔たりは大きく、粗いものではあるが、多少なりとも各位のお役にたてば幸いである。