林業立地変動論序説

農林業の経済地理学


林業立地変動論序説
柳幸 広登
A5判 322ページ 上製
ISBN978-4-88965-164-5 C0061
在庫あり
奥付の初版発行年月:2006年11月
書店発売日:2006年11月10日

書籍の購入

定価:3,000円(税込3,240円)

お支払い方法…郵便振替後払い/銀行振込

※ 携帯でご覧の方に:このショッピングカートは携帯からは使えません。セブンアンドワイなど携帯に対応している外部サイトからのご購入をお願い します

他で購入

購入についての詳細ページへ >>


内容紹介

昨年急逝した気鋭の科学者が残した貴重な研究成果を1冊にまとめました。11月10日に刊行します。

目次

刊行にあたって 3

序  章
 第1節 本書の視点と構成 13
 第2節 海外林業研究の展開−林業立地論への布石として− 16
 第3節 「林業立地変動論序説」の解説
      −九州大学での1年8ヶ月を振り返りつつ− 21

第1章 林業地代論と木材価格論 27
 第1節 問題の所在 29
  1.木材価格形成の複雑性 30
  2.考察の順序 30
 第2節 木材価格と林業地代の原理的考察 31
  1.二範疇林業の区分 32
  2.採取的林業における木材価格と地代 34
   差額地代/絶対地代
  3.育成的林業における木材価格と地代 41
  4.二範疇林業の共存と木材価格 43
 第3節 木材価格形成の特殊性 46
  1.育林過程の長期性と木材価格 46
   育林過程の長期性/人工林立木価格の「地代化」
  2.木材価格分析のための単純模式 52
理論的前提/伐出規模を伐出業が自由にしうる場合/伐出業が伐採規模を自由にできない場合/外材輸入が国内林業に与える影響
  3.立木を供給する諸事情 61
   立木販売の動機/森林を造成する動機

第2章 北海道における林地転用と農地造成 71
 第1節 道東民有林における農地造成の現況とその特質 73
  1.はじめに 73
  2.北海道における農地造成と農廃地造林 74
  3.美幌町の実態 77
   概況/農地造成の特徴
  4.おわりに 81
 第2節 網走地域における林地転用の実態とその構造 81
  1.転用農家の性格 81
   はじめに/目的と方法/耕地規模拡大の実態/農地造成農家の階層性/おわりに
  2.背景と論理 87
   はじめに:本稿の課題/林地転用の背景/林地開発の論理/まとめ
  3.転用以前の所有権移動 95
   はじめに/課題と方法/1960年以降の所有権移動/旧所有者の特徴/土地の流動性/おわりに
 第3節 昭和50年代におけるカラマツ材生産の展開とその帰結
    −林地転用とカラマツ材生産− 101
  1.本稿の課題 101
  2.昭和50年代におけるカラマツ材生産量の急増 101
  3.林地転用とカラマツ材生産 103
  4.円高下の立木供給構造の変化:農地転用の急減 105
  5.素材生産業への影響 107
  6.おわりに 109
 第4節 1960年代以降における林地移動の時系列的分析 110
  1.課題と方法 110
   研究の背景/本報告の課題と方法
  2.林地の売買経路 112
  3.所有構成の時系列的変化 116
  4.おわりに 118
 第5節 林間放牧の地代負担力−穂別町の事例を中心にして− 119
  1.はじめに 119
  2.穂別町における肉牛生産の展開 119
  3.粗飼料基盤と混牧林の位置づけ 120
   粗飼料基盤/混牧林の位置づけ
  4.国有林内への混牧林の設定と利用状況 122
  5.林間放牧の所得増大効果と地代負担力 123
   所得増大効果/地代負担力
  6.まとめ 125

第3章 ニュージーランドにおける育成的林業の拡大と人工林保有構造の変化 131
 はじめに 133
 第1節 林業・林産業の特徴 133
 第2節 1990年代以降における人工林の拡大とその要因 137
  1.人工林面積の推移 137
  2.新規造林面積の時期別推移 139
   第2次造林ブーム期(1960年代後半〜1980年代前半)/急落期(1985〜1991年)/第3次造林ブーム期(1992〜1999年)とその終焉(2000年以降)
  3.第3次造林ブームを出現させた要因 142
 第3節 第3次造林ブームの担い手と人工林保有構造の変化 143
  1.パートナーシップ造林 143
  2.小規模保有者の増加 146
 第4節 既存人工林の売買の激化 148
  1.国有人工林の伐採権売却とその余波:1990年代 148
  2.機関投資家による既存人工林の取得:2000年代前半 152
 おわりに 155

第4章 チリにおける林業・林産業の拡大と林業政策の展開 163
 はじめに:ニュージーランドのライバルとしてのチリ 165
 第1節 チリの林業・林産業の概観 166
  1.素材・製材・パルプの生産と輸出 166
  2.人工林面積の推移と造林コスト 170
 第2節 チリにおける人工造林の展開 173
  1.1970年以前 173
  2.1970年以降の人工造林面積の推移 175
   「造林協定」による国営造林の開始:1970〜73年/国営造林と民営造林の併存時代:1974〜78年/国営造林の廃止:1979〜82年/雇用対策としての「国営造林」の登場:1983-85年/完全民営造林時代:1986年以降
 第3節 民営造林の拡大に果たした「林業振興法(政令701号)」の役割 178
 第4節 チリの林業・林産業における2大グループの地位 181
 おわりに 184

第5章 オーストラリアにおける産業植林の動向 195
 第1節 人工林資源の現況 197
  1.所有形態別人工林面積 197
  2.人工林の齢級構成 203
 第2節 人工林面積と新規植林面積の推移 206
  1.人工林面積の推移 206
   全国的な動向/州別人工林面積の推移
  2.新規植林面積の推移 213
   全国的な動向/州別人工林面積の推移
 第3節 植林ブームの担い手と背景 218
  1.担い手:植林投資会社と小口投資家 218
  2.植林ブームの背景 224

第6章 ヨーロッパにおける農地造林と林業助成策の展開 227
 はじめに 229
 第1節 ECの林業政策展開の時期区分 229
 第2節 1974年の「林業施策に関する命令」草案から規則797/85号の成立まで 232
  1.EC林業政策の第1段階:74年の「林業施策に関する命令草案」から78年まで 232
  2.第2段階:1979年から84年 233
   条件不利地域の農業開発対策の1つとしての林業助成/新農業構造政策など1983年の4提案
 第3節 第3段階(85年以降):林業政策の拡大 237
  1.農場への林業助成策の拡充 238
   農地造林への助成/農地造林による所得損失補償/保育費用、森林の改良などへの助成/農業指導保証基金の分担率の推移
  2.その他の林業助成策 241
森林保護対策/木材の加工・流通対策/その他
 おわりに 243

第7章 不在村所有の動向と今後の森林管理問題 249
 第1節 森林管理問題の一焦点としての不在村者所有林 251
 第2節 不在村者所有林分布と時系列変化の地域的特徴 253
 第3節 不在村所有者の諸タイプとその動向 257
  1.不在村所有者のタイプ 257
  2.大山林不在村所有 257
  3.中小不在村所有 259
  4.転用・投機目的の林地購入者 259
  5.挙家離村に伴う不在村者所有 261
  6.ダム建設による不在村所有 262
 第4節 不在村者所有林管理問題の焦点−新段階の過疎化と相続問題 264
  1.農山村住民の高齢化に伴う不在村者所有林の増加 264
  2.中山間地域出身者の居住地−島根県立矢上高校卒業生の事例 267

第8章 林業立地変動論草稿 277
 第1節 林業立地変動論−チリの事例を中心にして− 279
  はじめに:本報告の課題 279
  1.チリにおける林業立地移動 280
  2.育成林業的土地利用の拡大と天然林伐採跡地拡大をもたらした要因 280
   モデル/チリにおける育成林業的土地利用の拡大と天然林伐採放置地拡大の要因
 第2節 林業地代論の再評価−林業立地変動論の立場から− 285
  1.学会報告要旨 285
  2.いまなぜ林業地代論の再評価が必要なのか 285
  3.林業史研究への利用:加藤氏 287
  4.立地論の立場から:藤田佳久氏 287
  5.学会報告図表 288
   林業立地変動とは/戦後の林業地代論の遺産/藤田説/手束氏の指摘と国際的林業立地/阪本氏モデル(チューネン・モデルの援用)/農林立地変動論

弔  辞 297
〈巻末資料〉
柳幸広登の足跡 303
柳幸広登業績一覧 306

前書きなど

「刊行にあたって」から抜粋
 柳幸広登さんは、2005年11月28日、食道ガンのために逝去されました。柳幸さんがこれまで行ってきた研究は、その一つ一つが明確な方向性に基づいたものであり、その方向の延長上に「結論」が示されるのではないかと予感させるものでありました。編集委員会メンバーの共通の思いは、柳幸さんの思い出を本にして未来に残すことよりも、完成一歩手前で逝去された柳幸さんの著作をまとめ、柳幸理論の輪郭を改めて世に出すことであり、その意味でできるだけ科学的な論文集にしようということでした。数多くある柳幸さんの論文の中から、本書に収録した論文を選択したのは編集委員会です。また、各章毎に、若手研究者の解説文を付けました。これを併せて読むことによって、柳幸理論の体系が読み取れると思います。
編集委員会を代表して 餅田治之(筑波大学大学院教授)