「水を育む森」の混迷を解く

「注目する要因だけの科学」から「全てを背負う科学」への転換


「水を育む森」の混迷を解く
田中隆文
A5判 170ページ 並製
ISBN978-4-88965-239-0 C0061
在庫あり
奥付の初版発行年月:2014年07月
書店発売日:2014年08月01日

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内容紹介

「後追いの科学技術」を乗り越え、新たな地平へ。

目次

はじめに 3
初出一覧 4

第Ⅰ章 期待と混迷の中で 9
1.広がる社会と科学の隔たり 9
2.混迷の原因 10

第Ⅱ章 明治初期における主要国の認識 13
1.イギリス 13
2.アメリカ 16
3.フランス 17
4.ドイツ 21
5.英領インド 24

第Ⅲ章 日本の先進性と後進性 29
1.「舶来ニアラズ」発表の背景 29
2.「舶来ニアラズ」の主張と論調 35
3.「御国の栄誉を海外に揚げること」 38
4.万国博覧会における日本への評価 40
5.国際的な関心の高まり 45

第Ⅳ章 伝統的水源涵養機能論の評価 49
1.ワグネルの内国勧業博覧会報告書 49
2.「水源涵養土砂扞止方案」をめぐる状況 55
3.その後の森林水源涵養機能論 76
4.伝統的水源涵養機能論はどう評価されたのか? 84

第Ⅴ章 森林水源涵養機能論が迷走する理由 89
1.森林水源涵養機能論を巡る状況 89
2.三軸構造の科学技術社会論的意味 92
3.森林水源涵養機能の科学的な解明に向けて 98
4.近代科学に振り回される森林水源涵養機能論 110

第Ⅵ章 新たな野外科学へ向けて 115
1.「注釈を重視する科学」へ 115
2.百年の乖離を繰り返さないために 117
3.「すべてを背おうとする科学」へ 119
4.注釈とともにデータを使用し理論を適用 123

第Ⅶ章 社会に受け入れられる注釈重視科学 125
1.伝えるコミュニケーションの必要性 125
2.発信すべき注釈情報 127
3.どのように発信すべきか 130
4.重ね合わせのシステム 135
5.信頼性の確保 138

第Ⅷ章 まとめ 141

おわりに 145
謝辞 149
引用文献 151
索引 167

前書きなど

・「はじめに」
 自然と人間社会との接点を扱う野外科学の分野において近代科学的な捉え方とは一体、何だったのか。本書では、この問題を森林と水との関係から振り返りたい。
 森林があれば洪水も渇水も緩和されるという「森林水源涵養機能論」については、百数十年以上も前から社会と研究者の間で見解の乖離が続いている。本書ではその理由を、「注目する要因だけに着目する」という近代科学の性格と、その近代科学を手放しで受け入れる近代日本の姿勢に辿った。
 1884年に英国で開催された万国森林博覧会において、日本の在来の森林保全技術は高い評価を得ており、1897年には日本は英米に先駆けて森林法を制定し、森林水源涵養機能論を前提とした政策を推進した。しかし、皮肉にもこれらは森林水源涵養機能論の科学技術的な検証の遅れを露呈させ、研究者に明快な回答を迫ることとなった。
 このような「科学技術が社会の後追い」をするという構図は、現代における地球温暖化問題や巨大地震対策にもみることができる。後追いの科学技術が陥りがちな安易な即答や単純比較の回答が、かえって議論の混迷を招くことを、森林水源涵養機能論の百数十年の迷走から学ばねばならない。
 本書では、自然と人間社会との接点を扱う野外科学の分野において、今後どのように「科学」を適用していくべきかという課題について、森林水源涵養機能論の辿った経緯を踏まえ、具体的な展望を示した。ビッグデータ時代の到来に翻弄されることなく、「全てを背負う野外科学への脱皮」がキーワードとなる。データのコンテキストの重視こそが、森林水源涵養機能論の百数十年の迷走を止める第一歩である。

担当から一言

「後追いの科学技術」を乗り越え、新たな地平へ。