森林景観づくり

その考え方と実践


森林景観づくり
由田 幸雄 著者, 堀 繁 監修,
A4 269ページ 並製
ISBN978-4-88965-248-2 C0061
在庫あり
奥付の初版発行年月:2017年02月
書店発売日:2017年02月06日

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内容紹介

森林景観づくりの手法を解説した初めての本。500枚以上の写真で森林景観整備の内容がよくわかる!

目次

発刊に寄せて 3
はじめに 5

第1章 景観 13
1 景観とは何か 13
2 景観に関する用語 14
3 人間にはどう見えているのか 16

第2章 景観整備 23
1 景観整備とは何をすることなのか 23
2 景観整備は何に基づいて行えばよいのか―景観は好みなのか― 26
3 景観の価値 26
(1)動物の生存本能とのかかわり 26
(2)行動科学とのかかわり 30
(3)人間の視知覚特性とのかかわり 40
(4)人は林縁の明るいところで休む 40
4 景観の価値に基づく森林景観整備の考え方 43

第3章 視点の選定 47
1 視点と視対象の関係を整えるとは 47
2 よい眺めとなるように視点を設ける 47
(1)よい眺めとは 47
(2)ほどよい大きさとは 47
(3)視点の選定は何が難しいのか 52
(4)視点をできるだけ多く設ける 52
3 視点選定の考え方とその事例 54

第4章 視点場の整備 57
1 眺める場所の整備 57
(1)なぜ整備が必要なのか 57
(2)整備の具体的な内容 58
2 眺める場所のまわりの空間の整備 63
(1)なぜ整備が必要なのか 63
(2)整備の具体的な内容 65
3 視点場の範囲について 68
4 眺める場所への案内・誘導 70

第5章 見通しの確保 75
1 見通しの確保とは 75
2 見通しが阻害されているとは 75
(1)見通しが阻害されている事例 76
(2)見通しが阻害されていない事例 79
(3)見通しの阻害の有無を識別する方法 81
3 見通しを確保する方法 82
(1)見る方向にものを立ち上げない 82
(2)見通しを阻害しているものを取り除く 83
4 見通しが改善された事例 85
(1)寛永寺清水観音堂における見通しの確保 85
(2)清水寺における景観整備 89

第6章 見えているものの整備 97
1 苑路のまわりを整備する 97
2 眺める場所のまわりを整備する 99
3 視点から離れたところを整備する場合の考え方 100

第7章 森林景観 103
1 森林景観とは 103
(1)図と地について 104
(2)ゲシュタルト心理学―図になりやすいもの― 105
(3)私たちは景色をどう眺めているのか 106
2 森林景観には図となるものが必要 106
(1)地形の変化が少ない眺め 106
(2)森林に山や水面が加わった眺め 108
(3)森林景観に人工物を取り込んだ眺め 108
(4)人工物の有無による眺めの違い 109
(5)森林景観に人工物を上手に取り込む 110
3 森林景観についての別な考え方 111
(1)従来の森林景観 111
(2)新しい森林景観はパンドラの箱なのか 112
(3)人工物隠蔽思想の問題点は何か 113

第8章 森林景観整備の必要性と難しさ 117
1 森林景観整備はなぜ必要なのか 117
(1)国民の森林に対するニーズ 117
(2)森林の変化―森林飽和― 118
(3)森林の保健文化機能の発揮 119
2 森林景観整備は何が難しいのか 120
(1)樹木の伐採に対する強いプレッシャーがある 120
(2)伐採に対するプレッシャーがない場合はどうなのか 124
(3)そのほかの難しくしている理由 126

第9章 山地における視点の選定 129
1 視点は見通しを確保しやすいところに設ける 129
(1)前方が急斜面のところに視点を設ける 129
(2)前方に水面があるところに視点を設ける 130
2 よい眺めとなる視点の選定 131
(1)山のほどよい大きさとは 131
(2)視点前方がコンケーブ地形だと見やすくなる 134
3 視点選定の実際の進め方 134
(1)視点をかつての眺める位置に設ける 135
(2)道路(車道、歩道)沿線に新たに設ける 135
(3)道路沿線にこだわらず、新たに視点を設ける 136
(4)見通しがよくないときの視点の探し方 136
(5)視点選定の難しさは何か 137

第10章 山地における視点場の整備 139
1 眺める場所の整備 139
(1)日塩もみじライン沿線の眺める場所 139
(2)龍王峡 白岩の休憩所 143
(3)できるだけ柵を設置しない 144
(4)そのほかの眺める場所の整備事例 147
2 眺める場所のまわりの空間の整備 148
(1)富士見展望台まわりの空間の整備 149
(2)額取橋近くの展望台まわりの整備 153
(3)展望台を高くするよりも展望台のまわりを整備する 155
3 眺める場所への案内誘導 157

第11章 山地における見通しの確保 163
1 基本的な考え方 163
2 山地と平地における見通しの確保の違い 163
(1)山地では整備する範囲が小さくなる 164
(2)山地では遠くにあるものが見通しを阻害することはない 164
3 眺望伐採は何が難しいのか 165
4 眺望伐採の難易度別の事例 165
(1)見通しを阻害している樹木が明確な場合(Aタイプ) 166
(2)見たいものが近くにある場合(Bタイプ) 168
(3)視点前方が急斜面の場合(Cタイプ) 171
(4)視点前方が緩斜面の場合(Dタイプ) 174
(5)見たいものがかなり見えている場合(Eタイプ) 178
5 眺望伐採における留意点 182

第12章 眺望伐採におけるデザイン上の工夫 185
1 奥行感の強調―視点近くに樹木を残すー 185
2 そのほかのデザイン上の工夫 187
(1)フレーム効果 187
(2)スリット効果 193
(3)見切り 195

第13章 山地における見えているものの整備 203
1 視点のまわりを優先して整備する 203
2 対象場の樹林を整備するときの考え方 204

第14章 森林景観整備事業の実施事例 207
1 奥日光 西ノ湖西岸における整備 207
(1)事業の概要 207
(2)ヤチダモの枯損とその原因 207
(3)ヤチダモ林の保護対策 211
(4)ハイカー利用の分散による被害の軽減化 212
(5)ヤチダモ林保護対策の効果 217
2 二つの大ダムが同時眺望できる場所の整備 218
(1)事業実施の背景 218
(2)事業の内容 219

第15章 シークエンス景観に配慮した整備 225
1 シークエンス景観 225
(1)シークエンス景観とは 225
(2)シークエンス景観の特徴 225
(3)日本庭園における眺めの変化 226
2 道路沿線における景観整備 228
(1)山地における眺めの変化 228
(2)歩道沿線における整備事例 228
(3)車道沿線における整備事例 231
3 シークエンス景観の変化の作り方 234
4 視点となる歩道の整備 238
(1)歩道の新設 238
(2)歩道の改修 241
(3)歩道の安全対策 242
(4)場違いなものをつくらない 245
5 車道からの見通しの確保 246

第16章 森林景観整備事業の合意形成 249
1 事業の合意形成 249
(1)合意形成はなぜ必要なのか 249
(2)合意形成を行わない場合の問題点は何か 250
(3)なぜ合意形成を行わないのか 251
(4)何を合意形成するのか 251
2 合意形成のための様々な手法―合意形成のためには何を行えばよいのか― 251
(1)検討委員会の設置 251
(2)現地検討会の実施 252
(3)マスコミを通じた情報提供 253
3 マスコミを通じた情報提供の実施事例 254

第17章 森林景観整備後の維持管理 259
1 景観整備後の視点場等の状況 259
2 景観整備後の維持管理がうまくいかないのはなぜか 261
(1)視点場が一体的に管理されていない 261
(2)維持管理のやり方が明確にされていない 263
3 維持管理をうまく行うための方策 264
(1)協議会等を結成し、共同管理する 264
(2)維持管理の内容を明確にする 264

おわりに 267
参考文献・引用文献 268

前書きなど

●「発刊に寄せて」から
 日本は、国土の67%が森林で覆われている「森の国」です。しかし、森林は豊富ですが、国民は必ずしも森林の豊かさを実感できないでいます。その主な原因の一つは、“森林景観”が豊かでないことにあります。私たちは印象のよい、魅力的な森林を見ることによって、初めて“森林の豊かさ”を実感できるのです。それでは、“魅力的な森林景観”を創出するためには、どうすればよいのでしょうか。その考え方と具体的な手法をわかりやすく説明しているのが本書です。“森林景観づくり”により国民に魅力的な森林景観を提供しようとする本書の出版は大変意義深いものです。
 本書には多くの特長がありますが、主なものをあげると以下のとおりです。
 一つは、眺められる対象の森林よりも、眺める場所とそのまわりの整備を重視していることです。
 これまでの森林景観の整備は、眺められる対象の森林に着目して、魅力的な森林景観とするためのデザイン手法を中心に論じられてきました。しかし、森林が広大なことに加えて、そもそも魅力的な森林景観の内容が明確でなく、景観整備の実施を難しくしていました。それに対して、本書のように、整備の対象を眺められる森林から眺める場所に転じると、整備する範囲と内容が明確になるので実施が容易になります。すでに景観工学の分野では、眺める場所を重視する整備手法がとられていますが、森林の分野ではこれまでなく、本書が初めてです。
 二つめは、景観の基本的なこと、たとえば“分かりやすい眺め”とか“ほどよい大きさの眺め”等について、著者が実際に見て検証し、確認していることです。これは簡単なことのようですが、本書のように数多くの事例について具体的に説明するのは容易ではありません。読者は、豊富な事例の検証・確認作業を著者と一緒に行いながら、“森林景観づくり”について理解を深めていくことができるでしょう。
 三つめは、本書の内容がとても分かりやすいことです。本書では、数多くの比較写真等を使用して、景観や景観整備等について、丁寧に説明しています。取り上げている事例は、著者が何度も現地に足を運んで、自らの目で確かめたものです。このため、説明が観念的でなく、極めて具体的、実証的になっています。本書の内容は、著者でしかまとめることのできなかったものであり、大変な労作といえます。
 本書を読まれた方が“森林景観づくり”についての理解を深められ、それを実践することによって、豊かで魅力的な森林景観の創出につながることを期待しています。
平成29年2月
東京大学アジア生物資源環境研究センター
教授 堀 繁

担当から一言

森林景観づくりの手法を解説した初めての本。500枚以上の写真で森林景観整備の内容がよくわかる!