新刊


森林保護と林業のビジネス化

マツ枯れが地域をつなぐ


森林保護と林業のビジネス化
中村 克典 編著, 大塚 生美 編著, 佐藤 文吉, 駒木 貴彰, 梅津 勘一
A5判 212ページ 並製
ISBN978-4-88965-258-1 C0061
在庫あり
奥付の初版発行年月:2019年03月
書店発売日:2019年03月22日

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定価:2,200円(税込2,376円)

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内容紹介

マツ枯れという危機を超えて林業振興へ、地域再生の処方箋を描く!

目次

はじめに 3

第Ⅰ部 マツの文化と歴史 9
1章 たたら製鉄にみる岩手の森林産業の黎明  11
 1.たたら製鉄による森林資源の産業化 11
 2.たたら製鉄の発展と製炭地域の形成 13
 3.鉄山の開発による森林資源の枯渇 15
 4.たたら製鉄の終焉と木炭産業の新たな展開 17
2章 アカマツの利用と施業方法の変遷 21
 1.アカマツ林の分布と成立過程 21
 2.アカマツ材の利用と文化 25
 3.アカマツ林の施業 27
 4.これからのアカマツ林施業 30
3章 地域遺産としてのクロマツ海岸林 33
 1.はじめに 33
 2.クロマツ海岸林の遺産的価値 33
 3.変化する海岸林-森は移り変わるもの- 39
 4.地域遺産を守る取り組み-「多様な主体の協働」- 41

第Ⅱ部 マツ林を蝕むもの-マツ枯れとその原因- 45
4章 マツ枯れ被害拡大の歴史 47
 1.「マツ枯れ」の正体 47
 2.被害拡大の歴史 47
 3.海外に広がるマツ枯れ被害 57
5章 マツ枯れが広がる仕組み-マツを枯らす線虫とカミキリムシ- 61
 1.はじめに 61
 2.マツ枯れの原因の探索と線虫の発見 62
 3.マツノマダラカミキリによる線虫の媒介 63
 4.マツノマダラカミキリだけが線虫を運ぶ理由 66
 5.マツノマダラカミキリが保持する線虫の数 69
 6.マツノザイセンチュウ近縁種とカミキリムシの関係 71
 7.おわりに 72
6章 マツノザイセンチュウに侵入されたマツに起こること 75
 1.樹木の病気いろいろ 75
 2.マツ材線虫病の場合 80
 3.寒冷地でのマツ材線虫病による枯死 83
7章 マツノザイセンチュウあれこれ 85
 1.はじめに 85
 2.マツノザイセンチュウの生態 85
 3.マツノザイセンチュウにまつわるこれまでの経緯 90
4.おわりに 93

第Ⅲ部 マツ枯れ対策技術の今日 95
8章 マツ枯れ防除技術の現状と展望 97
 1.マツ枯れとたたかう手立て 97
 2.防除技術の現状 98
 3.薬剤使用が制約される中でどうマツ枯れとたたかうのか 102
 4.防除を戦略的に進めるために 106
9章 天敵微生物を利用した生物的防除技術の展開 109
 1.微生物によるマツ枯れ防除 109
 2.天敵微生物とは 110
 3.バイオリサマダラ 110
 4.「バイオリサカミキリ」について 117
 5.マツ枯れゼロを目指して 118
10章 環境配慮型防除技術への挑戦 121
 1.逸出抑制法-被覆・粘着資材を用いたマツ枯れ防除- 121
 2.逸出抑制法の東北地方における適用試験 124
 3.サビマダラオオホソカタムシ放飼とその効果 126
 4.2年1化への対応 131
 5.まとめ 133
11章 抵抗性種苗生産技術の今日 135
 1.抵抗性マツの開発 135
 2.抵抗性クロマツ種苗の生産 141

第Ⅳ部 マツ枯れの資源化と地域資源の認知 149
12章 マツ被害木の燃料利用と地域の林業再生 151
 1.マツ被害木の燃料利用の意義 151
 2.マツ被害木燃料利用の需要ポテンシャル 152
 3.マツ被害木の燃料利用への布石 155
 4.紫波町におけるマツ被害木の燃料利用と森林資源循環利用への取り組み 156
 5.花巻バイオマスエナジーのチャレンジ 159
 6.マツ被害木の燃料利用の課題と地域の林業再生に向けて 162
13章 マツ被害木のチップ向け利用-山形県庄内地方を事例として- 165
 1.はじめに 165
 2.山形県内におけるマツ枯れ被害発生状況 165
 3.被害木の利用 166
 4.木質バイオマス発電向けの素材生産 168
 5.おわりに 176
14章 マツ枯れ対策と地域の資源循環-岩手県行政の取り組みより- 179
 1.はじめに 179
 2.岩手県におけるマツ枯れ被害の拡大経過 180
 3.岩手県のマツ枯れ被害対策 180
 4.被害が定着した地域での取り組み 184
 5.おわりに 187

第Ⅴ部 枯れる前に利用する 189
15章 アカマツ材の利用と流通 191
 1.アカマツの資源分布と素材生産の状況 191
 2.アカマツ材の新たな需要開拓と流通 194
16章 アカマツ品種選択ツールの開発 199
 1.はじめに 199
 2.アカマツ品種選択ツールについて 200
 おわりに 209

執筆者一覧 211

前書きなど

●「はじめに」から
 マツ林が荒廃している。この荒廃をもたらした最大の原因がマツ枯れ被害の蔓延であることに異論はないと思う。古くから日本人の生活に馴染み親しまれ、木材や燃料をはじめとする生活物資の供給源として、また防風防砂機能をもって人々の役に立ってきたマツ林は、明治期に海外から侵入したマツノザイセンチュウが引き起こすマツ枯れの被害によって激しく蝕まれた。高度経済成長期以降の燃料革命や林業の低迷も相まって、マツ枯れ被害はますます激しく、マツという樹種自体の存在がかすんでしまうような状態となってしまった。
 本書の執筆者の多くは、国や県の森林・林業研究機関でマツ枯れをはじめとする病害虫に関する研究に長く携わってきた。生物としての病害虫や、それらが引き起こす様々な現象は研究対象として興味の尽きないものである。しかし、林業という場面において病害虫研究が目指すべきゴールは防除である。防除は対象とする樹木・森林を守るための重要な活動ではあるのだが、基本的に受け身で、積極的に何かを生み出す活動ではない。相手がマツ枯れのような強力な病害になれば、費やされる防除努力(経費、労力)は膨大なものとなるが、それで得られるものはせいぜいが現状維持、悪くすれば被害の進行を遅らせるので精一杯である。それでも直面するマツ枯れ被害に対処しようと、研究活動を続けてきた。
 外来の強力な伝染病であるマツ枯れを力でねじ伏せるべく、化学農薬を利用したマツ枯れ防除技術が確立され、適切な運用で着実な防除効果があげられてきた。そうやって守られてきたマツ林が、近年の農薬使用抑制の流れの中でマツ枯れ被害拡大の危機に瀕している。我々研究者には、農薬使用が制約される条件下でも有効なマツ枯れ対策技術の検討が求められることになったのだが、農薬の効き目を代替できるような都合のよい新技術をそう簡単に編み出せるはずもない。そこで、既存の技術であっても十分に普及、活用されていないものを総動員することでマツ枯れ防除技術の体系を補強する、という方針に基づく研究プロジェクトを立ち上げた。「技術の総動員」ということを考える中で、森林病害虫分野の枠組みにとどまることなく、被害木の効率的処理に有効と目されていた燃料利用を進めるための社会システムの整備、あるいは被害拡大予防を目的にマツ林を伐採した際に生み出される木材の有効利用といったテーマについて、各分野の専門の研究者との協働が模索されることになった。互いにこれまでの研究活動であまり交流のなかった分野との協働は困難も予想されたが,プロジェクトを進めるうちにむしろ分野間での親和性の高さを強く感じられるようになった。そのような中、病害虫分野の研究者らにとって目を開かされる思いだったのは、折からのバイオマス発電の隆盛や国産材利用促進への動きを受けてマツ枯れ被害木の燃料利用や予防伐採されるアカマツの用材利用が地域の林業振興に貢献できる可能性が示されたことであった。受け身で非生産的だったはずのマツ枯れ防除が、生産的な活動として積極的に推進されるものとなるかもしれないのである。
 本書では、ややもすると地域の埋もれた資源となってしまっているマツを、マツ枯れという危機を契機に掘り起こして利用することで、森林保護と林業振興を両立させてしまおうという、いささか虫のよい、しかし十分に実現可能と考えられる企てを世に問おうとしている。第Ⅰ部でマツ林がこれまで果たしてきた役割を再認識していただいた上で、第Ⅱ部では知っているようで実はあまり知られていないマツ枯れ被害とその原因について解説する。引き続き第Ⅲ部ではマツ枯れ防除の概略について述べた後、社会的要請の強い天敵利用や抵抗性育種といった環境低負荷なマツ枯れ対策について研究の現状を伝える。そして、これからのマツ枯れ防除を考える上で焦点となる被害材の燃料利用、および被害拡大阻止のための予防伐採に関連して第Ⅳ部でマツ枯れ被害木の資源化、第Ⅴ部でアカマツ材の需要開拓について、産業振興やビジネス化の観点も加えて解説してゆく。
 本書が、荒廃し顧みられることの少なくなったマツ林の復権、マツを核とした地域林業再生の点火剤となることを心より期待したい。
2019年2月
執筆者を代表して 中村 克典

担当から一言

マツ枯れという危機を超えて林業振興へ、地域再生の処方箋を描く!