森と木と人のつながりを考える

 

木質バイオマス熱利用(温水)計画実施マニュアル 基本編

自然科学

一般社団法人日本木質バイオマスエネルギー協会(編集)

B5判  264ページ 並製
価格 6,600円 (本体価格 6,000円)
ISBN978-4-88965-270-3 C0061
在庫あり

書店発売日 2022年08月19日

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解説

木質バイオマスの熱利用を進めるために、実務経験が豊富な執筆陣が書き下ろした我が国初の総合的な手引書です。脱炭素社会の実現に必要な知見やノウハウをすべて収録しました!

紹介

木質バイオマスの熱利用を進めるために、実務経験が豊富な執筆陣が書き下ろした我が国初の総合的な手引書です。脱炭素社会の実現に必要な知見やノウハウをすべて収録しました!

目次

第1章 ネットゼロに向けた世界の動向と木質バイオマスエネルギー熱 1
 1.1.世界全体の状況 1
  1.1.1.はじめに 1
  1.1.2.世界全体でのバイオマスエネルギー利用の現状 1
  1.1.3.バイオマスエネルギー利用の将来予測 3
 1.2.欧州の木質バイオマス熱利用の状況 4
  1.2.1.欧州全体の状況 4
  1.2.2.各国の状況 6
 1.3.まとめと日本への示唆 14

第2章 木質バイオマス熱利用の考え方と本マニュアルの作成目的 15
 2.1.2030年の目標 15
 2.2.木質バイオマスの供給可能性 16
 2.3.GHG削減効果と持続可能性 18
 2.4.木質バイオマスエネルギー利用の地域効果 20
 2.5.コストの削減 21
 2.6.本書の目的 23

第3章 プロジェクト管理の必要性とポイント 25
 3.1.はじめに 25
 3.2.プロジェクト管理の必要性 25
  3.2.1.メーカー任せにできない理由 25
  3.2.2.プロジェクトマネジメントの発電との違い 25
 3.3.プロジェクトの進め方 27
  3.3.1.プロジェクトの工程 27
  3.3.2.FS調査と事業性評価の重要さ 27
  3.3.3.イニシャルコストの構成とボイラー出力の決定 27
 3.4.建屋・サイロ、熱供給システムの検討 28
 3.5.ランニングコストの構造と燃料代 29
  3.5.1.燃料代(木質バイオマス+化石燃料) 29
  3.5.2.燃料消費量を決定する要因 29
  3.5.3.燃料の確保 30
 3.6.電気代とシステムの健全性の関係 30
  3.6.1.ボイラー本体と燃料供給装置 30
  3.6.2.ポンプ動力とシステムの制御 30
  3.6.3.メーカーによる保守点検費とプラント管理費 31
 3.7.稼働時間、バイオマス依存率の重要性 31
  3.7.1.燃料消費量による稼働時間、バイオマス依存率分析 31
  3.7.2.安定稼働を支える体制 32
 3.8.ボイラー選定 32
  3.8.1.ボイラー選定方法 32
  3.8.2.選定の際に検討・確認する項目 33
  3.8.3.導入実績 34
 3.9.プロジェクト管理の実際的対応 34

第4章 木質バイオマスの燃焼特性 35
 4.1.木質バイオマスの組成と燃焼性 35
  4.1.1.木材の構成成分とそれらの熱に対する抵抗性 35
  4.1.2.木材の元素組成と燃焼特性 35
 4.2.木質バイオマスの燃焼とは 36
 4.3.木質バイオマスの発熱量 38
  4.3.1.高位発熱量と低位発熱量 38
  4.3.2.発熱量の計算 38
  4.3.3.有効発熱量 39
 4.4.燃焼空気 41
  4.4.1.理論空気量 41
  4.4.2.空気比 42
 4.5.木質バイオマスの燃焼性を高めるための各種対策 43
  4.5.1.不完全燃焼による未燃物の排出 43
  4.5.2.空気の予熱利用 43
  4.5.3.排ガス再循環(EGR) 43
  4.5.4.NOx対策 44
  4.5.5.ダイオキシン対策 44

第5章 木質バイオマス燃料(チップ、ペレット) 47
 5.1.木質バイオマス燃料の概要  47
  5.1.1.原料の種類と特徴 47
  5.1.2.燃焼灰 52
  5.1.3.木質燃料の品質ランクとボイラーにおける取り扱い 56
  5.1.4.木質バイオマス中の水分 58
  5.1.5.木質バイオマスの発熱量 62
  5.1.6.木質バイオマスの計量単位 65
 5.1.7.木質燃料の形質 68
 5.2.燃料用チップ 72
  5.2.1.燃料用チップに要求される性能 72
  5.2.2.チップの種類と形質 73
  5.2.3.木質チップの乾燥 74
  5.2.4.燃料用チップのエネルギー評価 81
  5.2.5.燃料用チップの保管 81
 5.3.木質ペレット 84
  5.3.1.木質ペレットの燃料としての特徴 84
  5.3.2.木質ペレットの生産 84
  5.3.3.木質ペレットの成型・固化機構 89
  5.3.4.燃料としての木質ペレットの品質 91
  5.3.5.木質ペレットの輸送と貯蔵 94
  5.3.6.木質ペレット産業の展開 98
 5.4.燃料の乾燥 104
  5.4.1.燃料生産のための原料乾燥 104
  5.4.2.乾燥のメリット 114
  5.4.3.乾燥の市場価値の適正評価 117
 5.5.規格と認証制度 121
  5.5.1.規格と認証制度の意義 121
  5.5.2.規格 121
  5.5.3.認証制度 149
  5.5.4.今後の展望 150

第6章 木質バイオマスボイラーの特質 153
 6.1.化石ボイラーとの違い 153
  6.1.1.バイオマスの投資回収モデル 153
  6.1.2.化石ボイラーとバイオマスボイラーの違い 153
  6.1.3.蓄熱タンクによるシステム 154
 6.2.薪ボイラーとチップ・ペレットボイラー 154
  6.2.1.バイオマス燃料による違い 154
  6.2.2.薪ボイラー 155
  6.2.3.チップボイラー(ペレットボイラー) 155
  6.2.4.チップボイラーの着火方法 156
 6.3.チップボイラーの運転タイプによる違い 156
  6.3.1.断続運転タイプ 156
  6.3.2.連続運転タイプ 157
  6.3.3.連続運転タイプの熱負荷変動への対応 158
  6.3.4.連続運転タイプにおける「種火運転」の仕組み 159
  6.3.5.断続運転タイプの低負荷時の稼働 159
  6.3.6.連続運転タイプの低負荷時の留意点 159
  6.3.7.断続運転タイプの総合的な効率と熱負荷傾向への適性 160
  6.3.8.連続運転タイプの総合的な効率と熱負荷傾向への適性 160
 6.4.バイオマスボイラーの燃焼炉・熱交換器構造 160
  6.4.1.二次燃焼構造 160
  6.4.2.耐火壁 161
  6.4.3.熱交換器 161
  6.4.4.循環昇温回路 162
  6.4.5.灰取出し・排出機構 163
 6.5.燃焼の仕組み 163
  6.5.1.燃焼室圧制御 163
  6.5.2.燃焼プロセスの6段階 163
  6.5.3.一次燃焼と二次燃焼のプロセス 164
  6.5.4.二次燃焼とO2センサー 164
  6.5.5.排ガス再循環 165
  6.5.6.排ガス温度 165
 6.6.ドラフトと煙突 166
  6.6.1.炉内の負圧制御 166
  6.6.2.煙突の構成要素 166
  6.6.3.煙突のドラフト効果 166
 6.7.バイオマスボイラーの安全装置 167
  6.7.1.安全装置が必要な部分 167
  6.7.2.缶水の沸騰防止 167
  6.7.3.機械室内へのガス放出防止 167
  6.7.4.逆火防止 169
  6.7.5.スクリューの安全停止機構 169
 6.8.燃料とボイラー出力・ボイラー効率・燃料消費量 169
  6.8.1.燃料の品質管理の重要性 169
  6.8.2.チップボイラーの対応水分 170
 6.9.燃料サイロ・供給装置 170
  6.9.1.チップサイロの容量 170
 6.10.蓄熱タンク(バッファータンク)の機能 171
  6.10.1.バイオマスボイラーと蓄熱タンク 171
  6.10.2.蓄熱タンクの機能 171
  6.10.3.蓄熱タンクとボイラーオンオフ制御の関係 172
  6.10.4.蓄熱タンクとボイラー出力制御の関係 172
  6.10.5.蓄熱タンクの温度成層の重要さ 173
  6.10.6.蓄熱タンクの容量の決定方法 173
 6.10.7.蓄熱タンクの断熱の重要さ 174
 6.11.遠隔監視システム 175
  6.11.1.遠隔監視システムの機能 175
  6.11.2.遠隔監視のパラメーター例 175
 6.12.日本のボイラー、欧州のボイラー 177
  6.12.1.日本のボイラーに関する規制 177
  6.12.2.欧州の規制との違い 177
  6.12.3.無圧式温水機、真空式温水機 179
  6.12.4.無圧式温水機等の問題点 180
  6.12.5.木質バイオマス温水ボイラーに係る規制緩和 181

第7章 熱利用システムの構成と関連機器 183
 7.1.熱利用システムの全体構成    183
  7.1.1.ボイラーの区分とボイラーシステム    183
  7.1.2.ボイラー・プラント(ボイラー → 蓄熱タンク)    183
  7.1.3.一次側の系統(蓄熱タンク → 循環ポンプ → 熱導管 → 受渡装置一次側)    185
  7.1.4.需要先の熱利用システム(受渡装置二次側 → 各熱需要回路)    185
 7.2.ボイラー関連機器 185
  7.2.1.蓄熱タンク 185
  7.2.2.燃料サイロ 186
  7.2.3.燃料搬送装置 188
  7.2.4.建屋 191
  7.2.5.煙突・煙道と施工上の留意点 192
  7.2.6.煙管自動クリーニング装置 194
  7.2.7.排気集塵装置(サイクロン、集塵機) 195
  7.2.8.灰分自動排出装置 196
 7.3.熱導管と制御 196
  7.3.1.温水循環と出力の関係 196
  7.3.2.需要先との受渡装置(一次側) 196
  7.3.3.負荷に対応する温度制御と流量制御 196
 7.4.需要先の機器と制御 197
  7.4.1.需要先との受渡装置(二次側) 197
  7.4.2.暖房回路、機器 197
  7.4.3.給湯回路、機器 198
  7.4.4.乾燥回路、機器 198
 7.5.配管機器(室内配管、室外配管) 198
  7.5.1.ポンプ(多機能型小型インバーター・ポンプ) 198
 7.6.計測・制御機器 204
  7.6.1.制御盤 204
  7.6.2.熱量計・流量計 206
  7.6.3.制御・遠隔監視・管理システム(SCADA System) 206
 7.7.冷房関連機器 211
  7.7.1.吸収式冷凍機(冷水機) 211
  7.7.2.吸着式冷凍機(冷水機) 215
  7.7.3.廃熱投入形吸収式冷凍機 216
  7.7.4.冷房についての考え方 217
  7.7.5.冷房利用時の注意点について 219

第8章 安全対策及び関係法令の規制 223
 8.1.安全対策 223
  8.1.1.工事における安全対策 223
  8.1.2.システムとしての安全対策 224
  8.1.3.導入後の安全対策 227
 8.2.関連法令の規制 229
  8.2.1.労働安全衛生法 230
  8.2.2.消防法・市町村条例 233
  8.2.3.大気汚染防止法 235
  8.2.4.建築基準法 236
  8.2.5.その他の規制 237

用語集 239

前書きなど

このマニュアルは、木質バイオマス熱利用の温水ボイラーシステム、現在一般的に使用されている中小規模ボイラー(500kW 程度以下のチップ・ペレットボイラーを想定)システムを対象として、システムの考え方や内容とともに、計画作成から、施工、維持管理・メンテナンスまでの実施の仕方や留意事項について説明したものです。
木質バイオマス熱利用等についての書籍等はこれまでも発行されてきましたが、このような具体的な技術的マニュアルは作成されてきませんでした。(一社)日本ボイラ協会においては化石ボイラーに係る教本が作成されていますが、木質バイオマスボイラーに係るものではなく、当該協会で行われるボイラー講義においてもほとんど触れられていません。このことは、これまで木質バイオマスボイラーのボイラー全体の中に占める割合、位置づけが極めて低かったことによるものと理解されます。また、このこともあり、現代的な木質バイオマス熱利用の我が国の取組は、20年ほどに及びますが、基本的には石油ボイラーに倣って設置されているものが多く、それで是とされてきました。
しかし、これまでの積み重ねにおいて、木質バイオマス熱利用はその特徴に即したあり方にしていく必要性が高くなっています。また、ゼロカーボンが指向される中では、これまでの化石ボイラーを切り替え木質バイオマスボイラー等が主要な役割を果たしていく必要があり、その効率的な運用が一層求められています。
このことは、今回の規制改革においても明らかになりました。一昨年(2020年)、当協会等で政府の規制改革推進会議に要望した温水ボイラーの労働安全衛生法等の規制緩和が認められ、2022年から施行されることとなりました。このことは、再生可能エネルギーを拡大するとの視点から、これまでの規制についても見直しをしていくとの姿勢の表れです。その意味では、私たちが木質バイオマス熱利用システムのあり方として考えている内容の具体化ができる素地が作られてきているといえます。
本マニュアルは、林野庁の助成事業により、木質バイオマス熱利用システムの基本的考え方に基づく技術的標準を明らかにしようとしたものですが、前述のようなこれまでの状況から、標準的なものとは何かについて合意形成を図ることから始めることが必要でした。そのため、これまで木質バイオマス熱利用に携わってきた学識経験者の方はもとより、コンサルタントやボイラーメーカー、ボイラーの輸入代理店等の方々にも参加をいただき、執筆すべき内容について議論をするとともに、それぞれの方にお願いして執筆いただいた原案についてさらに議論を重ねながら作成してきました。参加していただいた方、原案を執筆いただいた方は別添の一覧表の通りです。これらの方々には、通常業務を抱えながらの多忙の中でご協力いただき大変感謝しています。また、このような議論を通じて、木質バイオマス熱利用システムの今後のあるべき方向を提示できたと考えています。
このマニュアルは、木質バイオマス熱利用事業に係る事業者、コンサルタント、ボイラーメーカーの担当者、設計者、施工者、地方公共団体の担当者、さらに燃料生産・供給業者等にお読みいただきたいと想定しており、できるだけ一度は全体的に通読していただきたい、全体の関連性を理解していただきたいというのが願いですが、マニュアルは、17章からなりおおむね500ページに近い大部なものとなりましたので、各章の概要を別添に掲げます。この概要を参考に関心のあるところをお読みいただくことも可能かと考えています。
なお、1〜8章までは基本編、9〜17章までは実行編として、別冊にしています。
このようなマニュアルとしては初めてのものであり、議論が足りない部分や内容として不備な点もありうると想定しています。その点についてはご容赦をいただくとともに、ご意見等を下記により受け付けますので、このマニュアルがより良いものになるよう育てていただければと思っています。

(一社)日本木質バイオマスエネルギー協会
mail@jwba.or.jp

著者プロフィール

一般社団法人日本木質バイオマスエネルギー協会(イッパンシャダンホウジンニホンモクシツバイオマスエネルギーキョウカイ)

上記内容は本書刊行時のものです。

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