日本樹木誌 2
日本樹木誌編集委員会(編) / 渡邊定元(編集委員長)
B5判 664ページ 上製
定価 11,000円 (本体価格 10,000円)
ISBN978-4-88965-274-1 C0061
在庫あり
書店発売日 2023年08月25日
解説
日本の樹木に関する知見を集大成するシリーズの第2弾! 『日本樹木誌 2』では、32種の樹木について解説し、最新の分布図も収録しています。
紹介
日本の樹木に関する知見を集大成するシリーズの第2弾。2009年7月に第1弾(『日本樹木誌 1』)を刊行して以降、大変長らくお待たせしてしまい申し訳ございませんでした。『日本樹木誌 2』では、32種の樹木について解説し、最新の分布図も収録しています。
目次
『日本樹木誌 2』の発刊に寄せて(中静 透) 1
「日本樹木誌」の編集方針について 3
アカガシ(岡本素治) 31
1.種の概要 31
1.1.生活型 31
1.2.分類・系統 31
2.形 態 32
3.繁 殖 32
3.1.繁殖器官 32
3.2.結実過程と散布 33
3.3.発 芽 34
4.自然林の分布と立地 34
4.1.分布の概要 34
4.2.アカガシ林の水平・垂直分布と気候条件 34
4.3.地 形 35
4.4.土 壌 35
5.更 新 36
5.1.天然林における更新 36
5.2.萌 芽 37
6.成 長 37
7.管 理 38
8.被害要因 39
9.利 用 39
付記.葉の姿勢に関する考察 40
アカシデ(柴田銃江) 45
1.種の概要 45
2.分類系統、生物地理 45
3.生育地 46
4.群集内の位置、撹乱依存性 46
5.生活史 47
6.管理・造林 50
7.利 用 51
アカメガシワ(山川博美) 57
1.種の概要 57
2.生活型および形態 58
3.生育地と群集内の位置 59
4.生活史 61
5.成 長 64
6.管 理 66
7.利 用 66
8.民 俗 67
アズキナシ(正木 隆・河原崎里子) 73
1.はじめに 73
2.分 類 73
3.変種・交雑種 73
4.生活型 75
5.森林群集におけるアズキナシの位置づけ 75
6.生育地 77
7.繁殖・更新 79
8.生理生態 80
9.直径と樹高の成長 81
10.管 理 83
11.被 害 84
12.利 用 84
イイギリ(永松 大) 95
1.種の概要 95
2.分類と系統 95
3.形 態 96
4.生育地 96
5.群集内の位置 98
6.繁殖・更新 98
7.成長とフェノロジー 104
8.管 理 105
9.利 用 105
イスノキ(垰田 宏) 111
1.種の概要 111
2.形 態 112
3.生育地 113
4.群落および群落内の位置づけ 115
5.繁殖と更新 119
6.成 長 122
7.管 理 123
8.被害要因 125
9.利 用 126
10.植物文化 129
イヌガシ(名波 哲) 139
1.名前の由来 139
2.形 態 139
3.群集内の位置 140
4.生育地 141
5.繁殖・更新 141
6.成 長 143
7.管 理 147
8.被害要因 147
9.利 用 148
ウワミズザクラ(八木貴信) 151
1.新緑に映える白い尻尾状の花序 151
2.樹種の概要:生活形と分布 152
3.系統分類 152
4.森林群集の中での位置づけ 154
5.生活史特性 159
6.成 長 161
7.動物・菌との相互作用 171
8.利用・民俗 173
オガサワラグワ(河原孝行・谷 直樹・吉丸博志) 187
1.種の概要 187
2.分 布 189
3.立地と群集 190
4.生 態 191
5.遺 伝 193
6.管 理 196
7.病虫害 198
オニグルミ(木村 恵) 201
1.種の概要 201
2.生活型 202
3.種の分布・生育地 203
4.群集内の位置と個体群の構造 203
5.生活史 203
6.成 長 207
7.管 理 208
8.遺 伝 209
9.被 害 210
10.利 用 211
カツラ・ヒロハカツラ(久保満佐子・大住克博) 217
1.種の概要 217
2.歴史と系統 218
3.形 態 219
4.生育地 221
5.生活史 225
6.管 理 234
7.利 用 236
8.植物民俗 236
キハダ(小谷二郎) 245
1.種の概要 245
2.生活型 245
3.群集内での位置 246
4.生育地 247
5.繁殖・更新 249
6.成 長 251
7.管 理 254
8.被 害 259
9.利 用 261
シデコブシ(石田 清) 269
1.種の概要 269
2.分類と歴史 270
3.湿地と結びついた群集内の位置 273
4.シデコブシの分布 276
5.繁殖と更新 278
6.成 長 285
7.保 全 288
8.園芸的利用 293
シナノキ・オオバボダイジュ(林田光祐・大谷博彌) 301
1.種の概要 301
2.分布と生育地 302
3.繁殖・更新 304
4.成 長 307
5.管 理 309
6.遺 伝 312
7.被害要因 312
8.利 用 313
9.民 俗 313
シラカンバ(真坂一彦) 319
1.種の概要 319
2.分布と生育地 319
3.群集内の位置 321
4.生活史 322
5.管 理 335
6.遺 伝 339
7.被害要因 339
8.利用と花粉症 342
9.植物民俗 344
ダケカンバ(沖津 進・横井秀一・大住克博) 353
1.種の概要 353
2.分 類 354
3.生活型と形態 358
4.群落内の位置 361
5.生育地 363
6.個体群 369
7.繁殖・更新 371
8.成 長 373
9.施 業 377
10.保 全 380
11.被害要因 380
12.利 用 381
ツクバネガシ(前迫ゆり) 391
1.種の概要 391
2.生育地 393
3.群 集 395
4.繁殖・更新 397
5.成 長 402
6.管 理 403
7.利 用 407
8.植物民俗 407
ハイノキ・クロバイ(伊東宏樹) 413
1.種の概要 413
2.生活型 414
3.群集内の位置 415
4.生育地 416
5.繁殖・更新 418
6.成 長 421
7.管 理 422
8.被害要因 422
9.利 用 423
10.植物民俗 423
ハナガガシ(伊藤 哲) 429
1.種の概要 429
2.生活形・形態 429
3.生育地 431
4.群落内の位置 435
5.繁殖・更新 436
6.成 長 438
7.遺伝的多様性 440
8.管 理 441
9.利 用 442
ハリギリ(飯田滋生) 447
1.種の概要 447
2.生活型 448
3.群集内の位置 448
4.分 布 449
5.繁 殖 451
6.更 新 454
7.成 長 456
8.管 理 457
9.被害要因 460
10.利 用 461
11.植物民俗 462
ヒメシャラ・ヒコサンヒメシャラ(鈴木和次郎) 469
1.種の概要 469
2.形 態 470
3.分類と系統 471
4.生育地 472
5.群集と個体群 472
6.生活史 475
7.育成と管理 476
8.利 用 478
ミヤマカワラハンノキ(長谷川幹夫) 481
1.種の概要 481
2.分布および群集内の位置 481
3.繁殖と更新 482
4.成 長 485
5.育成と管理 489
6.利用と民俗 492
ヤチダモ(山本福壽) 495
1.種の概要 495
2.生育地 495
3.繁殖と更新 498
4.成 長 500
5.管 理 507
6.保 護 508
7.利 用 510
ヤブツバキ・ユキツバキ(真鍋 徹) 515
1.種の概要 515
2.分布および群集内の位置 517
3.生活史 519
4.管 理 524
5.被 害 525
6.利 用 526
7.植物民俗 528
ヤマザクラ(勝木俊雄) 535
1.種の概要 535
2.生育地 539
3.生活史 541
4.管 理 543
5.遺 伝 545
6.被 害 547
7.利 用 549
ユビソヤナギ(菊地 賢・鈴木和次郎) 557
1.種の概要 557
2.発見史 557
3.形 態 558
4.分類と系統 560
5.生育地 561
6.群 集 564
7.生活史 565
8.利用と管理 567
9.保 全 568
リュウキュウコクタン(谷口真吾) 573
1.種の概要 573
2.カキと黒檀の仲間 573
3.形 態 577
4.生育地 578
5.繁 殖 579
6.更新と成長 587
7.管 理 588
8.被害要因 591
9.利 用 591
日本樹木誌史的考察(渡邊定元) 597
Ⅰ 樹木誌の史的考察 597
Ⅱ 技術革新と樹木誌研究の視座 615
分布図(渡邊定元・河原孝行・松井哲哉・設楽拓人) 629
前書きなど
●『日本樹木誌 2』の発刊に寄せて
最初に、『日本樹木誌』の第2巻の発刊を喜ぶとともに、編集のご努力に敬意を表したい。
日本の森林の約半分を占めるのは人工林で、それを構成する樹種はせいぜい10種くらいに限られる。工業原料として利用する場合には、品質や規格のそろった材料が大量にあるほうがよい。しかし、日本の樹木は全体で約1,200種あると言われており、そのそれぞれが個性ある形態的・生態的特徴と生活史をもち、それらを日本人は上手に利用してきたという歴史もある。この本で紹介されているのは、それぞれの樹種がいかに多様な性質を持っているかであり、それらの情報を活かして利用することが、最も有効かつ価値の高い利用方法につながるはずであるし、持続可能な森林利用には、まさにそれが求められている。
とはいえ、まだまだ個々の樹種に対する情報は限られている。前巻で31種、この巻で32種、合計63種の樹木が紹介されているが、まだ日本の樹木全体の5%しかカバーできていない。これらの樹種を、森林総合研究所の林業・林産関係国内文献データベースで検索しても、15,000件を超える論文がヒットする樹種もあれば、ほとんどヒットしない樹種もある。これまで有用樹として使われてきた樹種に関しては情報も多いし、絶滅危惧や希少だと考えられている樹種に関しては、特に最近の文献が増えている。また、研究を行う時には、その樹種の分布なり、生態なり、材質なりという一面的な研究が多くなるため、文献が多ければカバーする分野や内容も広くなる。特に、生活史や更新特性のように時間をかけて追跡する必要のある情報は限られる。結局、これら多様な種を含んだ森林の持続可能な利用を考えるうえでは、まだまだ情報は足りないというのが偽らない現状だと思う。
しかし、この本が目指しているように、それぞれの樹種の多面的な性質を統合的に知ることは、データベースを用いた単純な分析を超えて、利用や保全に関する多くの示唆や洞察を与えてくれる。編者には対象樹種と特にかかわりの深い著者を選んでいただいていて、その経験や思い入れも含めた貴重な記述が文献情報の少なさをカバーしていると思う。新しい研究や利用方法に関する多くのひらめきを与えてくれる著作だと考えている。
2023年8月
森林研究・整備機構理事長 中静 透
版元から一言
牧野富太郎にも読ませたい!
著者プロフィール