御料局測量課長 神足勝記日記
林野地籍の礎を築く
大澤 覚(著/文/編集 他)
A5判 704ページ 上製
定価 22,000円 (本体価格 20,000円)
ISBN978-4-88965-276-5 C0061
在庫あり
書店発売日 2023年12月15日
解説
眠っていた第一級史料が現代に蘇る! 明治期に国土を測り、現代につなげた技術者の貴重な記録です。
紹介
眠っていた第一級史料が現代に蘇る! 明治期に国土を測り、現代につなげた技術者の貴重な記録です。
目次
刊行に寄せて iv
本書をお読みくださるみなさまへ―後世へ伝えたいこと― vi
御料地位置図 x
解 題 1
Ⅰ はじめに 1
Ⅱ 皇室財産設定のはじまり 4
Ⅲ 内務省・農商務省の巡回―神足の山梨県の巡回 12
Ⅳ 御料局 15
Ⅴ 三つの会計法令 22
Ⅵ おわりに―神足の生立ち 32
踏査測量事業進程表(Ⅳ―5の付表) 35
神足勝記履歴 46
おもな出来事 48
第一章 御料局入局前 59
明治一二(一八七九)年 二四~二五歳 60
明治一三(一八八〇)年 二五~二六歳 61
明治一四(一八八一)年 二六~二七歳 63
明治一五(一八八二)年 二七~二八歳 64
明治一六(一八八三)年 二八~二九歳 64
明治一七(一八八四)年 二九~三〇歳 64
明治一八(一八八五)年 三〇~三一歳 65
明治一九(一八八六)年 三一~三二歳 66
明治二〇(一八八七)年 三二~三三歳 66
明治二一(一八八八)年 三三~三四歳 68
明治二二(一八八九)年 三四~三五歳 69
明治二三(一八九〇)年 三五~三六歳 70
第二章 御料局入局後 71
明治二四(一八九一)年 三六~三七歳 72
明治二五(一八九二)年 三七~三八歳 74
明治二六(一八九三)年 三八~三九歳 95
明治二七(一八九四)年 三九~四〇歳 105
明治二八(一八九五)年 四〇~四一歳 111
明治二九(一八九六)年 四一~四二歳 136
明治三〇(一八九七)年 四二~四三歳 149
明治三一(一八九八)年 四三~四四歳 167
明治三二(一八九九)年 四四~四五歳 186
明治三三(一九〇〇)年 四五~四六歳 203
明治三四(一九〇一)年 四六~四七歳 221
明治三五(一九〇二)年 四七~四八歳 241
明治三六(一九〇三)年 四八~四九歳 268
明治三七(一九〇四)年 四九~五〇歳 289
明治三八(一九〇五)年 五〇~五一歳 302
明治三九(一九〇六)年 五一~五二歳 313
明治四〇(一九〇七)年 五二~五三歳 332
明治四一(一九〇八)年 五三~五四歳 349
明治四二(一九〇九)年 五四~五五歳 360
明治四三(一九一〇)年 五五~五六歳 371
明治四四(一九一一)年 五六~五七歳 381
明治四五・大正元(一九一二)年 五七~五八歳 405
大正 二(一九一三)年 五八~五九歳 418
大正 三(一九一四)年 五九~六〇歳 433
大正 四(一九一五)年 六〇~六一歳 451
大正 五(一九一六)年 六一~六二歳 467
大正 六(一九一七)年 六二~六三歳 479
第三章 退局後 497
大正 七(一九一八)年 六三~六四歳 498
大正 八(一九一九)年 六四~六五歳 507
大正 九(一九二〇)年 六五~六六歳 515
大正一〇(一九二一)年 六六~六七歳 520
大正一一(一九二二)年 六七~六八歳 527
大正一二(一九二三)年 六八~六九歳 533
大正一三(一九二四)年 六九~七〇歳 546
大正一四(一九二五)年 七〇~七一歳 552
大正一五・昭和元(一九二六)年 七一~七二歳 558
昭和 二(一九二七)年 七二~七三歳 562
昭和 三(一九二八)年 七三~七四歳 567
昭和 四(一九二九)年 七四~七五歳 571
昭和 五(一九三〇)年 七五~七六歳 577
昭和 六(一九三一)年 七七~七八歳 585
昭和 七(一九三二)年 七八~七九歳 591
昭和 八(一九三三)年 七九~八〇歳 595
昭和 九(一九三四)年 八〇~八一歳 600
昭和一〇(一九三五)年 八一~八二歳 606
昭和一一(一九三六)年 八二~八三歳 615
昭和一二(一九三七)年 八二歳 624
人名録
あ 625
い 628
う 632
え 633
お 634
か 640
き 643
く 644
こ 646
さ 648
し 650
す 651
せ 653
そ 654
た 654
ち 657
つ 657
て 658
と 659
な 660
に 662
の 663
は 664
ひ 667
ふ 668
ほ 669
ま 670
み 672
む 674
め 674
も 675
や 675
ゆ 678
よ 678
り 680
わ 680
引用文献目録 682
あとがき 684
前書きなど
刊行に寄せて
「森林国」日本は、その国土の約七割、約二五〇〇万haが森林で、さらにその三分の一にあたる約七六〇万haは国有林(国有林野)です。国(政府)が所有する国有林は、国民共通の財産として全国各地に広がっており、その多くは奥地の急峻な山地や水源地域にあって、良質な水の供給や土砂災害の防止、地球温暖化の緩和、生物多様性の保全など、木材生産のみならず、重要な働きを果たしています。
では、この国有林はどのようにしてつくられてきたのでしょうか。明治の昔に、官有地と民有地が区分されて、国有林ができてきたのですが、第二次世界大戦後の一九四七(昭和二二)年に「林政統一」されるまで、当時の農林省、宮内省、内務省が所管する三つの森林に分けられていました。
このうち、宮内省の外局である帝室林野局が管理・経営を行っていた森林は「御料林」と言われ、「御料林」からの膨大な収益は皇室費用の大半を賄っていたとされています。一八九九(明治二二)年に木曽官林など各地から台帳面積で約一四〇万haを移管したことを嚆矢として、一八九〇(明治二三)年にはその規模が五〇余か所、約三五〇万haに達しましたが、その後、下げ戻しなどもあり、林政統一された時には約一三〇万haとなっていました。
本書が焦点を当てている神足勝記氏は、帝室林野局の前身である御料局の初代測量課長として、「御料林」を含む御料地と民地の境界を明らかにする測量と大縮尺地図の作成を初めて指揮した技術者です。本書の副題にもなっている「林野地籍の礎」を固める歴史的な業績を残しました。
本書を編まれた大澤覚氏は、神足勝記氏の孫であり林野技官として活躍した神足勝浩氏から託された神足勝記氏の日記などの一次資料を約二〇年の歳月をかけて丹念に読み解き、その足跡を明らかにしました。
本書に収録されている神足勝記氏の詳細な測量などの記録は、森林の境界確定が大きな課題となっている現代の私達にとっても学ぶべきものが極めて多くあります。また、一時は二割を切るまで下がっていた木材自給率は四割を超すまで回復しており、国産材を再評価する上でも「御料林」の見直しが課題と言えるでしょう。
是非、森林に関わる幅広い方々に本書を手に取っていただき、神足勝記氏の業績を知り、これからの森林の管理・経営や地方史・郷土史研究などに活かしていただきたいと願っています。
二〇二三年一二月
公益社団法人大日本山林会会長
東京大学名誉教授
永田 信
著者プロフィール
大澤 覚(オオサワ サトル)
1950年6月 群馬県生まれ1985年3月 法政大学大学院博士後期課程満期退学
経済学専攻(財政論)
【主要著作】
『明治期皇室財政統計』(法政大学日本統計研究所、1992月7年)
『戦前期皇室財政統計』(法政大学日本統計研究所、1995月6年 ) 上記内容は本書刊行時のものです。